2020/12/09(水)
ツルソバ
館山市の沖ノ島にて。白い花と黒っぽい実をつけた植物が、そこかしこに繁茂している(写真1)。

- 写真1 園路脇に繁茂するツルソバ
ツルソバの名前の由来は、ソバに似ていて茎がつる状に伸びるから、ということらしい。かなり旺盛に繁茂しているので外来種のような雰囲気を感じるが、れっきとした在来種である。図鑑には本州の分布は伊豆七島と紀伊半島と書いてあったが、千葉県では館山などで記録されている。暖地の海岸に生える多年草だ。
花の花被(かひ;花弁とがくの総称)は白色で、5つに分かれている(写真2)。

- 写真2 ツルソバの花
花期が初夏~初冬と長く、花を咲かせながら実が熟していくようで、この日は花と実が一緒についているものが多く見られた(写真3)。

- 写真3 ツルソバの花と「実」
「実」といっても、じつは本当の果実はこの黒っぽいものではない。これは、花被が肥厚して液質になったもの。よく見ると、先端のほうが5つに分かれていて花被の名残を感じる(写真4)。

- 写真4
ツルソバの「実」を潰すと黒い汁が出るので、子どもがインクがわりにして遊ぶ、と聞いてやってみた(写真5)。暗紫色でまあまあいい色だが、インクがわりにするには結構な量を必要とする気がする。

- 写真5
「実」を潰したら、断面が三角形の長さ3ミリほどの黒いタネのようなものが中から出てきた。これがツルソバの本当の果実(写真6)。

- 写真6 ツルソバの痩果
中に入っている種子が1つだけで、果皮もごく薄く、種子とあまり見分けがつかない果実のことを痩果(そうか)と呼ぶ。ツルソバの果実はこの痩果で、「似ている」として名前の由来になったソバの果実(いわゆる「蕎麦の実」)も痩果である。
- ツルソバ Persicaria chinensis(タデ科)
- ソバ Fagopyrum esculentum(タデ科)
(西内李佳)