教室博日記 No.1951

 2021/04/22(木)

 養老川右岸からの眺望

 小湊鉄道上総大久保駅周辺で地形調査を行うことになった。チバニアン(千葉時代)の始まりを示す地磁気逆転地層の露頭がある月崎と、観光地の養老渓谷のあいだに挟まれた地域であるが、今までほとんど調査したことはなかった場所である。今回は養老川右岸の河岸段丘を調べるのが目的だが、近くになだらかな斜面が分布しているのが気になって、まずそこを訪ねてみた。

 細かい谷に刻まれた丘陵を抜けると、突然広々とした緩やかな斜面が広がっている(写真1)。ここは千葉県畜産総合研究センター市原生乳研究所があり、緩斜面はよく手入れされた牧草地になっている。この緩斜面は上総層群梅ヶ瀬層の砂からなり、もともと谷が少ない小起伏面であるが、牧草地にするために人工改変もされているようだ。

  • 写真1 牧草地になっている緩斜面。奥の高まりのピーク(赤×印 標高225m)がちば眺望100景のひとつ。

 写真1の奥の小高い山の上は、千葉県の眺望100景にもなっているということで、事務所にお願いして中に入れていただいた。標高225mのピークからは、周囲の山々を360°近く見渡すことができる。手前側が緩斜面になっているので、視界を遮るものがなく(写真2)、緩斜面と細かい谷に刻まれた丘陵が連続している。

  • 写真2 ちば眺望100景のひとつである標高225mのピークから南側を眺望

 一方少し下がったところから西側を見ると、定高性のある山並みの中に、ひときわ高く(といっても標高200~300m程度だが)そびえている山がある(写真3)。上総層群万田野層の砂取場や(写真4)、市宿層の砂からなる鹿野山である(写真5)。透水性のある砂の山が、侵食を免れて周囲の泥の山より高くなっている、房総特有の地形である(八木,2019)。

  • 写真3 定高性のある山並みの中にひときわ高い部分が見える
  • 写真4 万田野層の砂取場、反対側はダイナミックに砂が露出
  • 写真5 背後の高い山並みが鹿野山
  • 【参考文献】
  •  八木令子(2019):鹿野山と九十九谷. 房総の山のフィールド・ミュージアム ニュースレター しいむじな(66):1-2.

(八木令子)