教室博日記 No.1953

 2021/04/27(火)

 ハナミョウガ

 清澄山系にて。林道沿いの崖から長い葉を垂らしている草がある(写真1)。ハナミョウガだ。

崖から長い葉を垂らすハナミョウガ
  • 写真1

 ハナミョウガはショウガ科の多年草。千葉県は分布の北限に近い。ショウガ科は熱帯から亜熱帯にかけて多くの種があり、北へ行くほど種数が減る。千葉県のハナミョウガは、野生のショウガの仲間としては太平洋岸では最北のものなのだ。そのせいか、千葉の山でハナミョウガを見るとどことなく南国の気配を感じる。

 見つけた個体には赤い果実がついていた(写真2)。もともと存在感のある植物だが、赤い果実はひときわ目立つ。鳥に食べてもらって種子を運ばせるために、目立つ色でアピールしているのだ。しかし、ハナミョウガの果実が熟すのは晩秋から冬にかけて。今果実がついているということは、アピールの甲斐なく鳥に見つけてもらえなかったのであろう。

赤い果実がついたハナミョウガ
  • 写真2

 それなら私が、と標本にするために葉と果実を採取した。しばらく手に持って歩いていたら、葉裏の手触りがとても良いことに気づいた。まるで上質なビロードのようだ(写真3)。

  • 写真3 ハナミョウガの葉の裏

 葉裏を拡大してみた(写真4)。同じくらいの長さの非常に細かい毛が、ほぼ同じ向きに並んで生えている。手触りの良さはこのためだろう。このような、植物にある細かい毛のことをトライコーム(毛状突起)という。トライコームは形状も役割も様々だが、基本的には強い光や乾燥、害虫などから植物体を守るためのものらしい。

葉裏の拡大
  • 写真4

 葉真っ赤な果実にビロードのような手触りの長い葉。南国の雰囲気と相まって、ハナミョウガにはなんとなくエキゾチックな印象を受ける。

  • ハナミョウガ Alpinia japonica(ショウガ科)

(西内李佳)