教室博日記 No.1970

 2021/06/07(月)

 マガキのリレーが見られる地層

 君津市内の林道にて。砂質泥層中にマガキの化石が密集している。近付いて観察すると、細長い外形をしていて、大きな個体は殻高20センチに達する。さらに、殻頂(鳥の嘴のように尖っているところ)を下にして、突き刺さるような姿勢で地層中に埋もれている(写真1)。

  • 写真1 殻長20センチに達するマガキの化石(写真の上が地層の上位)

 現在の干潟に生息するマガキを観察すると、このような姿勢で砂泥中に突き刺さり、海水中の有機物を食べている場合がある。林道のマガキの化石も生きていた当時の姿勢を保持していると考えられる。二枚の殻が合わさった状態のマガキが集まって花束状になっている場合もあり、コロニーと考えられる(写真2)。

  • 写真2 マガキのコロニー(ねじり鎌の長さは約25センチ)

 マガキが連なり、総延長1.2メートル程度の長さに達しているのを見つけた(写真3)。

  • 写真3 マガキのリレー

 よく見ると、マガキの殻の上に次の世代が固着して成長していることが分かる(写真4)。これはリレー戦略と呼ばれ、次々と積み重なっていくことで、砂泥中に埋没して窒息死することを免れている。下になった前の世代は埋没して死ぬが、それを足場にして次の世代は生き残ることができるようだ。

  • 写真4 マガキの殻の上に次の世代が固着して成長している様子(写真3の59~24センチの区間を拡大したもの、黄色矢印は固着している部分)

 マガキ以外の貝類も含まれているが、ウチムラサキ(写真5)とアズマニシキ(写真6)など少数だ。

  • 写真5 二枚貝化石(ウチムラサキ)
  • 写真6 二枚貝化石(アズマニシキ)

 この周辺には藪層と呼ばれる約30万年前の地層が分布している。林道のマガキ密集層は内湾の汽水域に発達したカキ礁と考えられており、藪層基底の鍵層として、この周辺で広く追跡できる。埋没しないようにリレーをするとは、マガキも人知れず苦労している。今度マガキを食べる時は、このことを思い出して味わって食べたい。

  • マガキ Crassostrea gigas(イタボガキ科)
  • ウチムラサキ Saxidomus purpurata(マルスダレガイ科)
  • アズマニシキ Azumapecten farreri(イタヤガイ科)

(千葉友樹)