教室博日記 No.1974

 2021/06/17(木)

 地形図を見て気になった「砂坂」を訪ねる

 国土地理院の1:25000地形図「富津」図幅を見ていて、前から気になっていた「砂坂」を訪ねた。

 砂坂は、小糸川の左岸、富津市役所の北東側の小規模な丘陵鞍部を通る道路の途中の坂である(図1)。丘陵の西端は標高66.1メートルの三角点がある神明山であるが、この「神明山」と「砂坂」は文字が斜体になっており、図1の地形図の中で地名(字名)とは異なった字体が使われている。これらは山や坂の固有名詞ということなのだろうか。東京の山手台地では、◯◯坂といった名前がついた坂をよく見かけるが、千葉では珍しくて気になっていたのだ。

  • 図1 砂坂周辺の地形 カシミール3D(スーパー地形)の段彩陰影図に地名などを加筆

 丘陵の南側から歩き始めると、すぐに登り坂となる(写真1)。「砂坂」というくらいなので、砂層の崖が見られるのかと思ったが、両側は葉がびっしり茂った常緑広葉樹の斜面が続いている(写真2)。登り坂はすぐに終わり、丘陵鞍部のピーク(図1の×1、標高40m+)に着いたと思ったら、今度はすぐに下り坂になる。

  • 写真1 砂坂(南側からの登り坂)
  • 写真2 樹木が途切れたところが登り坂のピーク

 こちら側は、下部はコンクリートで被われ、上の方だけ樹木が茂る斜面となっている(写真3)。その樹木に遮られてほとんど隠れてしまっているが、本当は小糸川の広い沖積低地や、その向こう側に広がる君津・木更津の台地の眺望がきく、心地よい下り坂だったのではないかと思われる。実際、坂を下りきったところから見ると、遮るものもなく青々とした水田が広がっていた(写真4)。「砂坂」はすぐに終わってしまったが、それなりに趣のある坂であった。

  • 写真3 すぐに下り坂になる 樹木に眺望が遮られている
  • 写真4 坂を下りきったところから見た小糸川の低地

 5万分の1地域地質図「富津」によると、砂坂のある丘陵は下総層群地蔵堂層からなり、下部は上総層群周南層である。上部の地層は見られなかったが、坂の下の方には、やや硬い細砂~シルト層(周南層?)がところどころ露出していた(写真5)。やはり「砂坂」なのである。

  • 写真5 丘陵北側で見られる砂層(上総層群周南層?)

 坂を下りて北側の集落を歩いていて気になったのは、道の端に必ず溝があり、場所によっては水が勢いよく流れていることだ(写真6)。また丘陵を刻む小さな谷(谷津)の出口には、満々と水をたたえた大きな堰がある(図1の×2、写真7)。地形図を見ると、その西側の谷の出口にも同じような堰がある。これだけの水がどこから集まったのか?斜面の途中から水が湧いているのではないか。今回はそれを確認できなかったが、また歩いて確かめたいと思う。

  • 写真6 丘陵北側の道路端の溝
  • 写真7 谷津の出口の堰 水を満々とたたえている

(八木令子)