教室博日記 No.1993

 2021/07/29(木)

 大雨の後に顔を出した貝化石密集層

 木更津市内の山中にて。林道を歩いていると、落ち葉の下に白いものが見える(写真1)。近付いて観察すると、貝化石密集層だった(写真2)。7月初めの大雨の時に、林道に沿って水が川のように流れ、貝化石密集層が顔を出したのかもしれない。地層を観察するときは、垂直な断面を見ることが多いが、今回は水平な断面を見ている。当時の海底面に近いものを見ていることになる。よく見ると、ビノスガイやサラガイなどの楕円~長楕円形の二枚貝の長軸が同じような方角を向いている(写真2のだいたい上下方向)。水流や波のある環境では、二枚貝化石の長軸が特定の方角を向くようだ。

  • 写真1 林道に顔を出した貝化石密集層(黄色丸部分)
  • 写真2 貝化石密集層(黄色三角がビノスガイ、緑三角がサラガイ、地層の水平な断面を見ていることに注意)

 この林道沿いでは、貝化石密集層の垂直な断面も観察できるので、比較すると地層の広がりがイメージできておもしろい(写真3)。貝化石密集層に含まれる二枚貝のほとんどは、二枚の殻が離れた状態で地層中に埋まっている。そんな中、たまに二枚の殻が合わさったものが含まれていて、これを見つけるとうれしい気持ちになる(写真4)。

  • 写真3 貝化石密集層(ねじり鎌の長さは約25センチ、写真の上が地層の上位)
  • 写真4 二枚の殻が合わさった状態の二枚貝化石(エゾタマキガイ、赤色三角)

 この周辺には、藪層と呼ばれる約30万年前の地層が分布しており、写真の地層は波や水流の影響を受ける上部外浜の堆積物と考えられている。

  • ビノスガイ Mercenaria stimpsoni(マルスダレガイ科)
  • サラガイ Megangulus venulosus(ニッコウガイ科)
  • エゾタマキガイ Glycymeris yessoensis(タマキガイ科)

(千葉友樹)