教室博日記 No.2000

 2021/08/05(木)

 マルミノヤマゴボウ

 清澄山系にて。薄暗い林内で濃い赤紫色が目に止まった(写真1)。

  • 写真1

 マルミノヤマゴボウであった(写真2)。これは果実になりかけの花序である。

  • 写真2

 房総丘陵ではマルミノヤマゴボウは6月に開花する(写真3)。基本5枚あるがく片は白から薄桃色を帯び、はかない印象を受ける。

  • 写真3 2019/6/19 清澄山系にて

 ところが、花のから果実に移り変わるうちにがく片だけでなく花柄や花序の柄までが濃い赤紫色に変化する(写真4)。写真のものはまだ子房がふくれておらず、雄しべの名残も残っていて花のように見えるが、果実になりかけの状態。

  • 写真4

 同じ花序の中には子房がふくらんで果実らしくなってきたものもあるが、まだ未熟(写真5)。

  • 写真5

 9月になってようやく果実が黒く熟す(写真6)。花の役割は昆虫を招いて花から花へ花粉を運んでもらうこと。そして果実の役割は鳥に食べられて糞とともに種子をばらまいてもらうこと。だとすれば、白や薄桃色の花色は虫の目から見て目立つため、赤紫色のがく片と黒い果実の強いコントラストは鳥の目から見て目立つための仕掛けなのだろう。

  • 写真6 2019/9/4 清澄山系にて
  • マルミノヤマゴボウ Phytolacca japonica(ヤマゴボウ科)

(尾崎煙雄)