教室博日記 No.2013

 2021/09/03(金)

 空中にぶら下がる白い塊 セミヤドリガ幼虫

 鴨川の山中にて。空中に1センチほどの白い塊がぶら下がっていた(写真1、2、動画)。

空中にぶら下がるセミヤドリガの幼虫
  • 写真1
空中にぶら下がるセミヤドリガの幼虫
  • 写真2
  • 動画

 7月29日に、ぶら下がる奇妙な形のオオゴマダラエダシャクの幼虫を見たばかりだったが(教室博日記No.1995)、この日ぶら下がっていたのはセミヤドリガの幼虫だった。

 セミヤドリガはその名のとおり、幼虫がセミに寄生する。寄生するセミとしては、ほとんどがヒグラシだが、わずかながらアブラゼミなど他のセミにも寄生するらしい。この幼虫はセミの体の上でセミの体液を吸って成長する。終齢幼虫では、体表面に蠟物質が分泌され、 純白の綿毛に覆われたようになる。

 成熟した幼虫は蛹化するためにセミから離れ、口から出した糸にぶら下がって降下する。そのまま地面に降りるものもあるが、地面近くで揺れながら糸が草や葉などに引っかかると、今度は逆に糸を手繰って登りはじめ、やがて葉にたどり着き、蛹化するのに適当な場所を探すのだそうだ(大串龍一,1987)。この日目撃した幼虫は、まさにセミの体から離れて降下した後、葉に引っかかった糸を手繰って登っている最中だったのだ(動画)。その証拠に手繰り寄せた糸の玉を抱えているのが写真3に写っている。

  • 写真3 手繰った糸が丸められている

 寄生というと寄主を死亡させるイメージがあるが、セミヤドリガは寄生したセミにほとんど害は与えないのだそうだ。セミヤドリガは幼虫の見かけもフワフワとして可愛らしく、やさしい生きものなのだ。

 この日はセミヤドリガ科の別種、ハゴロモヤドリガの幼虫も目撃した(写真4〜6)。体長が1センチにも満たないベッコウハゴロモは、腹部に大きな幼虫に取りつかれ、重たいのかうまく飛べずに迷惑な様子だった。

  • 写真4 ハゴロモヤドリガに寄生されたベッコウハゴロモ
ハゴロモヤドリガに寄生されたベッコウハゴロモ
  • 写真5
ハゴロモヤドリガに寄生されたベッコウハゴロモ
  • 写真6
  • 【参考文献】
  •  大串龍一(1987) 日本の昆虫⑦ セミヤドリガ. 106 pp., 4pls.,文一総合出版
  • セミヤドリガ Epipomponia nawai(セミヤドリガ科)
  • ハゴロモヤドリガ Epiricania hagoromo(セミヤドリガ科)

(斉藤明子)