2021/09/16(木)
ヤスマツアメンボ
高宕山系にて。アメンボは馴染みのある昆虫だが、大型のオオアメンボ以外は結構種の同定が難しい。房総丘陵では、山中の沢や水たまりで見かけるアメンボはコセアカアメンボかヤスマツアメンボであることが多い。この日、林道脇の暗い水路にいたアメンボ(写真1、2)を採集してきた。顕微鏡下で腹部を確認すると、ヤスマツアメンボだった。

- 写真1

- 写真2 ヤスマツアメンボの居た水路
本種は、千葉県レッドデータの2011年版(千葉県レッドデータブック改訂委員会編,2011)で、「X 消息不明・絶滅生物」とされていた。その後、富津市、君津市、鴨川市などで次々と発見され、2019年に発行された千葉県レッドリスト動物編(千葉県環境生活部自然保護課編,2019)では一気にランクが下がり、「D 一般保護生物」とされた。
実際、房総丘陵の山で見ていると、明るいところにいるのはコセアカアメンボで、ヤスマツアメンボは薄暗い水たまりにいることが多く、居るところでは個体数も少なくない。では、なぜ絶滅種とされていたのか。現状の生息状況を見ると、急に増えたようにも思えない。きっと、房総丘陵の山の薄暗い水たまりにいるアメンボに、だれも気をとめていなかっただけではないだろうか。
普通に見られると思う昆虫でも、正確に同定して記録し標本を残していくことが大切なのだ。写真1の個体は、採集してヤツマツアメンボであると確認した。写真だけでは確実な同定はできない。
- 【参考文献】
- 千葉県レッドデータブック改訂委員会編(2011) 千葉県の保護上重要な野生生物—千葉県レッドデータブック—動物編 2011年改訂版. 538pp, 千葉県環境生活部自然保護課.
- 千葉県環境生活部自然保護課編(2019) 千葉県の保護上重要な野生生物 千葉県レッドリスト動物編 2019年改訂版. 40pp., 千葉県環境生活部自然保護課.
- コセアカアメンボ Gerris gracilicornis(アメンボ科)
- ヤスマツアメンボ Gerris insularis(アメンボ科)
(斉藤明子)