教室博日記 No.2069

 2022/02/09(水)

 絹皮病(きぬかわびょう)

 清和県民の森にて。森の中で白い塗料で塗られた枝の集合のようなものを見つけた(写真1)。人間が制作したアート作品のようにも見えるが、これは菌類の仕業。絹皮病(きぬかわびょう)と呼ばれる。

  • 写真1

 絹皮病を引き起こすのはシリンドロバシディウム・アージェンテウムという糸状菌(カビの仲間)で、この菌に冒されると枝の内部が腐って柔らかくなり紐のように垂れ下がる(写真2)。暗い森の中でこの絹皮病に出会うと不気味な印象を受ける。「山姥(やまんば)の休め木」と呼ぶ地方もあるらしい(楠木ほか, 1999)。

  • 写真2

 生きた木にこの菌が感染すると、幹を覆うように拡がり(写真3)、やがて木が枯れてしまうこともあるらしい。

  • 写真3 2011/05/26 清澄山にて

 菌類なので胞子で殖えるが、絹皮病に冒された枝が落下して他の樹木に触れると、そこからも感染が拡がる(写真4)。

  • 写真4

 白銀色に見える絹皮病の先端部分を拡大して見ると、細かい繊維状の菌糸が拡がり、やがて枝の表面を覆い尽くしていく様子がわかる(写真5)。

  • 写真5

 絹皮病は沖縄県の西表島から千葉県の清澄山まで分布することが知られていた(楠木ほか, 1999)が、分布は北上傾向にあるようだ。

  • シリンドロバシディウム・アージェンテウム Cylindrobasidium argenteum(タマバリタケ科)
    • 【参考文献】
    • 楠木学・秋庭満輝・石原誠・池田武文・河辺祐嗣 (1999) 山姥の休め木(絹皮病)の謎と働き.九州の森と林業 (50):1-4.

(尾崎煙雄)