教室博日記 No.2076

 2022/02/17(木)

 水流によって運ばれたウミギクの化石

 館山市内にて。この場所では数千年前の内湾にたまった砂と泥の互層が観察できる。泥層の中に厚さ10~20センチほどの薄い砂層が挟まれている(写真1)。

  • 写真1 泥層の中に挟まれる砂層(黄色三角は砂層の基底部、折尺の長さは約20センチ、写真の上が地層の上位)

 砂層は泥層に比べて固結が弱く、侵食されやすいためくぼんでいる。砂層には傾斜が緩やかな縞模様が見られ、写真1の緑色三角の辺りから右側に向かって湾曲し、水色三角の辺りで緩やかな凸部を形成する。これはハンモック状斜交層理と呼ばれる構造だ。ハンモックと言えば、木に吊るして昼寝をする道具(hammock)を連想するが、ここでは小山(hummock)の意味で、縞模様の緩やかな凸部(写真1の水色三角の辺り)をハンモックと呼んでいる。この縞模様は、振動を伴う水流によって形成されると言われている。普段は泥がたまる波静かな内湾で、水流が発生したらしい。

 砂層の基底部には貝化石が密集している。赤色で殻表面に棘の生えた強そうな二枚貝はウミギクだ(写真2)。岩礁に生息する二枚貝で、岩などの基盤に一度固着すると、そこから動くことができない。このため、内湾の泥底のような埋没しやすい場所には見られない。ウミギクは水流によって岩からはがされ、泥底へと運ばれたのかもしれない。

  • 写真2 砂層の基底部に見られるウミギクの化石(写真1の右側の黄色三角)
  • ウミギク Spondylus barbatus(ウミギク科)

(千葉友樹)