教室博日記 No.2080

 2022/03/04(金)

 内湾に生息していた暖流系貝類の化石

 富津市内にて。数千年前の内湾にたまった泥質砂層を観察していると、特徴的な二枚貝の化石を見つけた(写真1)。暖流系貝類として知られるハイガイとシオヤガイだ。どちらも現在の千葉県には生息していない。現在では、西南日本の限られた干潟でしか見ることのできない二枚貝だ。数千年前の温暖期に分布を広げたことが知られており、この時代の地層からは比較的よく見つかる。過去と現在で生物の分布が異なっていたことがよくわかる例だ。

  • 写真1 泥質砂層中のハイガイ(黄色三角)とシオヤガイ(緑色三角)の化石(スコップの柄の長さは約10.5センチ、写真の上が地層の上位)

 崖下に落ちていたハイガイとシオヤガイを水で洗ってみた。ハイガイの殻表面には太いうねが走り、突起も見られる(写真2)。膨らみが強いため、二枚の殻が合わさった状態では心形でかわいらしい(写真3)。シオヤガイは、三角形の形と殻表面の布目状の彫刻が特徴的だ(写真4)。

  • 写真2 ハイガイの化石
  • 写真3 二枚の殻が合わさった状態のハイガイの化石
  • 写真4 シオヤガイの化石
  • ハイガイ Tegillarca granosa(フネガイ科)
  • シオヤガイ Anomalodiscus squamosus(マルスダレガイ科)

(千葉友樹)