教室博日記 No.2096

 2022/04/18(月)

 コガシラコバネナガカメムシ

 南房総市にて。林道を歩いていたら、小さな虫が飛んできて私の腕にとまった(写真1)。体長は8ミリほど。一瞬アリかと思ったが、これはカメムシの仲間のコガシラコバネナガカメムシだ。これまでにコガシラコバネナガカメムシはたくさん見てきたが、この虫が飛んできたのを見るのは初めてだ。

  • 写真1

 コガシラコバネナガカメムシの生活は変わっている。この虫は幼虫も成虫もタケやササの茎の内部に棲んでいて、外に出ることはほとんどない。以前、君津市にお住まいの方から「タケを切ったら中からアリやシロアリのような虫がたくさん出てきて驚いた」というお話とともに下の写真をいただいた。写真2でアリのように見えるのはコガシラコバネナガカメムシの成虫で、シロアリのようにみえるのが幼虫だ。このことをきっかけに、コガシラコバネナガカメムシについて調べたことがある。

  • 写真2 2008/03/11 君津市内にて野村昌男氏撮影

 ササの茎を割って、中にいるコガシラコバネナガカメムシ(写真3)を見たことも何度もある。このようにタケやササの中で暮らすこの虫が外に出るのは春と秋の分散期だけで、とくに春に多いらしい(高橋, 2007)。その分散期の成虫がたまたま私の身体に飛んできたらしい。

  • 写真3 2008/05/02 三島小学校にて

 コガシラコバネナガカメムシの学名には「japonicus」と付けられているのだが、この虫は中国原産の外来種で明治時代以降に関東地方等に持ち込まれたものと考えられている(高橋, 2007)。

  • コガシラコバネナガカメムシ Pirkimerus japonicus(コバネナガカメムシ科)
  • 【参考文献】
  • 高橋敬一(2007)コガシラコバネナガカメムシとは何か?-「日本の」という名前を持つ外来種の話-. インセクト58(1), p.1-14.

(尾崎煙雄)