教室博日記 No.2101

 2022/04/20(水)

 プライアシリアゲ

 木更津市の谷津田にて。雨の中、虫を探してあたりの葉上を舐めるように見て歩いた。雨の日は、昆虫はあまり活動せず葉上などでじっとしている。晴れていればすぐに飛び去るような虫も、雨の日は見つけさえすればかえってじっくり観察できる。早速、葉上にプライアシリアゲを見つけた(写真1)。

葉上のプライアシリアゲ
  • 写真1

 和名からは昆虫であることすら判らないかもしれないが、プライアシリアゲはシリアゲムシ目シリアゲムシ科の昆虫だ。シリアゲという和名は、雄が尾端を背中側にクルリと上げていることに由来する。持ち上げている尾の先はハサミになっていて、つかむとこのハサミで結構チクチクするほど挟まれる(写真2)。このハサミがサソリを連想させることから英名はscorpionflyとされているが、毒はない。ハサミは交尾の際に使われ、このハサミで他の昆虫などを襲うことはないらしい。

つかむと尾の先のハサミで指を挟まれる
  • 写真2 

 シリアゲムシは顔も独特だ。長く伸びた吻の先に口がある(写真3)。

シリアゲムシの顔
  • 写真3

 和名の話題に戻るが、プライアシリアゲの「プライア」は、明治時代初期日本に滞在したイギリス人昆虫学者の名前である。プライアは日本各地で昆虫を採集し標本を母国に送り、その標本を元に多くの新種が命名されている。本種もそのうちの一種で、プライアが居住していた横浜で採集された個体を元に1875年に命名され、学名にはプライアの名前が献名されている。

 なお、シリアゲムシは交尾の際に雄が雌に餌をプレゼントすることが知られている。その現場をいつか見てみたい。

  • プライアシリアゲ Panorpa pryeri(シリアゲムシ科)

(斉藤明子)