フィールドノート No.2103

 2022/04/26(火)

 ヒゲナガオトシブミ

 清澄山系にて。この日はあいにくの雨降りだった。虫はこんな日はあまり活動しないので、林縁の植物をじっくり見ながら歩いた。クロモジの葉に甲虫の仕業と思われる特徴的な食痕があった(写真1)。ヒゲナガオトシブミの仕業だった(写真2)。

  • 写真1 クロモジの葉についた食痕
  • 写真2 ヒゲナガオトシブミ雄

 雄は触角と首(正しくは頭部と前胸部)がとても長く、雌雄はこの長さで区別できる。雌をめぐる争いなのか、雄同士が向かい合ってお互いの首から触角の先までの長さを競い合うような行動が見られるそうだ(安田ほか,2009)。

 葉上にいるのは雄ばかりだった。雌は器用に葉を巻いて揺籃(ようらん)を作り、卵を産み付けて切り落とす。孵化した幼虫は揺籃を食べて育つので、この揺籃は幼虫にとってゆりかご兼食料というわけだ。この日はまだ時期が早いのか、雌の姿は見られず、クロモジの下にゆりかごは落ちていなかった。

  • 【参考文献】
  •  安田守・沢田佳久(2009) オトシブミハンドブック. 80pp, 文一総合出版.
  • クロモジ Lindera umbellata(クスノキ科)
  • ヒゲナガオトシブミ Paratrachelophorus longicornis(オトシブミ科)

(斉藤明子)