フィールドノート No.2109

 2022/05/18(水)

 ルイスコメツキモドキ

 高宕山系にて。葉上にルイスコメツキモドキが静止していた(写真1)。体長は1センチほど。どこでも普通に見られる種で、時に大発生して栽培ワラビの害虫とされることもあるようだ(大友,2014)。成虫がワラビの茎の表面を囓るので外観が損なわれ、幼虫が茎の中を食害するのだそうだ。

葉上のルイスコメツキモドキ
  • 写真1

 コメツキモドキ類は以前は独立した科だったが、現在はオオキノコムシ科の一亜科とされている。コメツキモドキという名は、一見コメツキムシに似ていることに因むが、前胸部や触角などの様子がコメツキムシとは異なる。

 ルイスは、ジョージ・ルイスというイギリス人の名前に由来し、学名(種小名)にルイスの名前が献名されている。イギリス人のルイスは明治時代に日本を訪れ、日本中で甲虫を多数採集した。この中に含まれていたコメツキモドキが1873年に専門家により新種として発表された。標本は現在もロンドン自然史博物館に収蔵されている。これらの標本に基づき、多くの新種が発表され、日本における甲虫の分類学発展の基礎となった。千葉県に生息する甲虫のうち、63種もの学名にルイスの名前が献名されている。

 教室博日記No.2101でプライアというイギリス人の名が献名されているプライアシリアゲという昆虫を紹介した。イギリスに比べて日本の昆虫相は圧倒的に豊かだ。イギリス人にとって、初めて見る日本の昆虫はとても魅力的なものだったに違いない。

  • 【参考文献】
  •  大友令史(2014) 岩手県の栽培ワラビにおけるルイスコメツキモドキの発生. 北日本病虫研報65:167-169.
  • ルイスコメツキモドキ Languriomorpha lewisi(オオキノコムシ科)
  • プライアシリアゲ Panorpa pryeri(シリアゲムシ科)

(斉藤明子)