フィールドノート No.2120

 2022/05/28(土)

 スジグロボタル

 市原市の渓谷にて。湿地の草の上に見覚えのある虫がいた(写真1、2)。昨年、千葉県から初めて記録されたスジグロボタルだ(斉藤,2021)。

葉上のスジグロボタル
  • 写真1
葉上のスジグロボタル
  • 写真2

 ここにも居たのか、とうれしくなった。体長は1センチ弱、翅は鮮やかな赤色で黒色の縦すじがある。その特徴的な色彩から、見ればすぐにこの種とわかる。

 他県での観察では、本種の成虫は昼行性で発光はせず、幼虫は水辺に生息し、弱い光を発するらしい。幼虫はゲンジボタルのように常に水底で生活するのではなく、餌の捕食時に一時的に水の中に入る“半水生”と考えられている(大場,2011)。

 この日見つけた生息地は、昔は田んぼだったと思われる場所だ(写真3)。昨年の発見場所は、周囲の丘陵から豊富な湧き水のある谷津田の奥(写真4)だった。

葉上のスジグロボタル
  • 写真3
葉上のスジグロボタル
  • 写真4 君津市の谷津田(2021/5/26撮影)

 このように目立つ甲虫が、なぜ最近まで千葉県から報告が無かったのだろう。人間の生活の影響で、水辺の生き物の多くが絶滅の危機にあるが、房総丘陵に残された湧水が豊富な放棄水田には、人知れず生息している昆虫がまだまだ居るのかもしれない。

  • 【参考文献】
  •  斉藤明子(2021)千葉県におけるスジグロボタルの記録. 房総の昆虫(69):54-55.
  •  大場信義(2011)ホタルにとって水田とその付随施設はどのような環境か?. 国立歴史民俗博物館研究報告 第162集:11-31.
  • スジグロボタル Pristolycus sagulatus sagulatus(ホタル科)
  • ゲンジボタル Luciola cruciata cruciata(ホタル科)

(斉藤明子)