フィールドノート No.2122

 2022/06/02(木)

 アリドオシ

 君津市の山中にて。薄暗いスギ植林地で、差し込んだ光に照らされた赤い果実が目についた(写真1)。

過ぎ植林地で目に赤い果実
  • 写真1

 スギの枯れ枝に埋もれるような低い位置に、アリドオシの果実が残っていたのであった。アリドオシは、写真を見てわかる通り細く鋭いトゲがたくさん生えた常緑低木である。このトゲが「アリを刺し通すほど細く鋭い」というのが名前の由来らしい。トゲのおかげか、シカの多い地域でもアリドオシは食害を免れ林床でふつうに見られることが多い。

 アリドオシの果実は冬に熟す。果実の鮮やかな赤は、種子を運んでくれる鳥にアピールするための色だ。しかし、こんな時期でもまだ果実が残っているところを見ると、アリドオシの果実はあまり美味しくないのかもしれない(写真2)。

  • 写真2 赤く熟した果実

 山道をしばらく進むと、アリドオシが複数個体まとまって生えている場所があった。いくつかの個体は花が咲いている(写真3)。

アリドオシの花
  • 写真3

 下向きの白い花が、葉の陰に隠れるようにつく。びっしり生えた鋭いトゲとは裏腹に、アリドオシの花はなんとも清楚である。

 花と果実の両方がついた個体もあった(写真4)。濃い緑の葉に白い花、赤い果実のコントラストが林内に映える。

アリドオシの花と果実
  • 写真4

 花も果実も綺麗な植物だと思うが、おそらく鋭いトゲのせいで庭木などに利用されることはほとんどないようだ。林内にひっそり生えるのも、アリドオシの魅力と言えるかもしれない。

  • アリドオシ Damnacanthus indicus var. indicus(アカネ科)

(西内李佳)