フィールドノート No.2128

 2022/06/08(水)

 イロハモミジ

 市原市の渓谷にて。イロハモミジの若い果実が地面に落ちている(写真1)。

落ちたイロハモミジの若い果実
  • 写真1

 目線を上に移すと、イロハモミジの枝が垂れ下がっていた(写真2)。

垂れ下がったイロハモミジの枝
  • 写真2

 イロハモミジは美しい紅葉で有名な樹木だ。単に「もみじ」と言うとこのイロハモミジを指すことが多い。しかし、イロハモミジの見どころは真っ赤な紅葉だけではないと思う。

 イロハモミジの果実は、カエデ属共通のプロペラ型。中央の膨らんだ部分に種子が入っている。写真1のように未熟なうちに落ちてしまうことも多いのだが、本来は熟すと写真3のように中央から割れる。そして、種子を重りとして翼でクルクル回りながらゆっくり落下する。できるだけ滞空時間を長くすることで、その間に風に吹かれて少しでも遠くに種子を飛ばす戦略なのだ。翼にあるスジは、空気抵抗を生み出してより長く空中に留まるためのものらしい。

  • 写真3 イロハモミジの熟した果実標本

 枝についている若い果実をよく見ると、葉の上に逆さまにぴょこんと出ている(写真4)。全てではないが、イロハモミジにはこのように、逆さまや水平についている果実がしばしば見られる。

葉の上に出ているイロハモミジの若い果実
  • 写真4

 花の時から逆さまについているわけではない。写真5は中央博物館生態園で撮影したイロハモミジの花。

  • 写真5 イロハモミジの花(2021/4/4生態園で撮影)

 風に長く乗るためには軽い果実のほうが良い。枝から垂れ下がるほどの重さが果実にないだけとも考えられる。しかし、少しでも高い位置から落とすためにできるだけ上向きに果実をつけているとしたら、美しいだけでなく強かな樹木だな、と思った。

  • イロハモミジ Acer palmatum(ムクロジ科)

(西内李佳)