フィールドノート No.2183

 2022/10/02(日)

 キカミモジホコリ

 元清澄山系にて。苔むした朽ち木の表面が鮮やかな黄色の粒々に覆われている(写真1)。右下に転がっている丸いものはヒノキの球果で、これが直径1センチほど。

  • 写真1

 よく見ると黄色くて丸い粒々には「柄」があって朽ち木やコケの表面に生えている(写真2)。高さは2ミリほど。キノコのようにも見えるが、これは変形菌の仲間の子実体だ。

  • 写真2

 変形菌は「粘菌」とも呼ばれ、かつてはキノコと同じ菌類に含められていたこともある。たしかに繁殖のための胞子を作る子実体はキノコに似ている(写真3)。しかし子実体になる前の変形菌は不定形の巨大なアメーバのような姿ので朽ち木の中などを這い回る(写真4)。これを「変形体」といい、キノコとはまったく異なる生物だということがわかる。今は変形菌は菌類でも植物でも動物でもない「アメーボゾア」というグループに分類されている。

  • 写真3
  • 写真4 変形菌の変形体(種は不明) 2022/7/10鴨川市内にて

 変形菌の和名には「〜ホコリ」と、末尾に「ホコリ」がつく。この日見つけた黄色い粒々はキカミモジホコリのようだ。細く、少しねじれた柄を「黄色い髪」に見立てたのだそうだ(写真5)。

  • 写真5
  • キカミモジホコリ Physarum flavicomum(モジホコリ科)
  • 【参考文献】
  • 川上新一・新井文彦・高野丈(2022)変形菌 発見と観察を楽しむ自然図鑑.271pp.山と渓谷社.

(尾崎煙雄)