フィールドノート No.2188

 2022/10/14(金)

 ヤマハンノキ

 清澄山系にて。林道沿いにヤマハンノキが生えていた(写真1)。

ヤマハンノキ
  • 写真1

 ヤマハンノキは北海道から九州まで分布するが、房総丘陵ではそれほど多くない樹木である。重鋸歯のあるほぼ円形の葉は特徴的で、ヤマハンノキだということはすぐわかる(写真2)。

歯に重鋸歯のあるヤマハンノキ
  • 写真2

 ただし、ヤマハンノキ Alnus hirsuta にはほとんど無毛の変種ヤマハンノキ(狭義)var. sibirica と、葉や葉柄、冬芽などに毛の多い変種ケヤマハンノキ var. hirsuta がある。毛の量には変異が多く、変種の同定は難しい。

 この日見つけたヤマハンノキは葉裏の葉脈上に毛が生えているが(写真3)、毛の量はあまり多くなかったので、ここでは広義のヤマハンノキとする。

葉裏の葉脈上に毛が生えている
  • 写真3

 ヤマハンノキの下の地面には、「ミニ松ぼっくり」のようなものがたくさん落ちていた(写真4)。これはヤマハンノキの果実に違いないのだが、松ぼっくりとは根本的に違うところがある。

ヤマハンノキの果実
  • 写真4

 松ぼっくりはマツ科の果実(球果)で、鱗片(種鱗)の間に種子が挟まっている。ヤマハンノキの「ミニ松ぼっくり」は果穂(かすい)、つまり果実の集合体であり、鱗片(果鱗)の間に挟まっているのは種子ではなく果実(堅果)なのだ(写真5)。このような形の果穂は、カバノキ科のカバノキ属やハンノキ属に共通である。

  • 写真5 ヤマハンノキの果実

 このヤマハンノキの果穂は、なぜか先端が尖った形のものが多かった(写真6)。

ヤマハンノキの果穂
  • 写真6

 果穂が変な形だと果実もたいして入っていないのではないかと心配になったが、写真5の通り果実はちゃんと入っていた。個体数の多くない植物の果実が実っていると、なんとなくほっとする。

  • ヤマハンノキ(広義) Alnus hirsuta(カバノキ科)
  • ヤマハンノキ(狭義) Alnus hirsuta var. sibirica(カバノキ科)
  • ケヤマハンノキ Alnus hirsuta var. hirsuta(カバノキ科)

(西内李佳)