フィールドノート No.2189

 2022/10/14(金)

 ヤマモモの実生

 清澄山系にて。暗い森の地表に生えた樹木の実生(写真1)。高さ10センチほどで、葉の長さは5〜7センチ。葉の縁はギザギザに切れ込んで鋸の歯のようだ。これはヤマモモという常緑広葉樹の実生。

  • 写真1

 ヤマモモは公園や街路樹にも植えられることがあり、房総半島南部の自然林にも多く自生している。雌雄別株で、夏に雌の木になる果実は赤く熟すと甘酸っぱくて美味い(写真2)。

  • 写真2 ヤマモモの若い果実 2022/6/23中央博物館生態園にて

 雄の木には春に雄花が咲く(写真3)。雌雄に関係なくヤマモモの葉は細長い楕円形(専門用語では倒披針形(とうひしんけい)という)で、葉の縁はまったく切れ込まない。しかし、若い枝につく葉の縁には細かいギザギザ(鋸歯(きょし)という)が見られることがあり、さらに芽生えて間もない実生の葉は写真1のように激しく切れ込む。植物の勉強を始めたばかりの学生のころ、山の中でこの実生を初めて見たとき、何の実生なのかさっぱりわからずに難渋したことを思い出す。

  • 写真3 ヤマモモの雄花序 2021/3/19中央博物館生態園にて
  • ヤマモモ Morella rubra(ヤマモモ科)

(尾崎煙雄)