フィールドノート No.2195

 2022/10/28(金)

 キイロコウカアブ

 旧三島小教室博物館にて。静かな教室内で聞こえる音といえば、風の音か生きものが立てる音だ。この日、教室内で作業をしていると、私の周囲をぶーんと音を立てて飛ぶ虫がいた。これはキイロコウカアブというミズアブ科の一種。飛んではすぐに室内のどこかへ降り立つので追い掛けて撮影した(写真1、2)。

キイロコウカアブ
  • 写真1
キイロコウカアブ(前面から)
  • 写真2

 後架(コウカ)とは、禅寺で僧堂の後ろにある洗面所、つまり、トイレのこと。同属の別種コウカアブは幼虫が糞尿に発生することから「便所バチ」とも呼ばれているらしい。水洗トイレが普及した今も生ゴミや浄化槽から発生して屋内に入り込む。そのためハエの仲間で人を刺すことは無いにもかかわらず、姿がハチに似ていることと不潔感から人間には不快昆虫とされている。

 一方、キイロコウカアブの幼虫は林床の腐敗物などで育つ。コウカアブと同様、生ゴミからも発生するだろうが、成虫は明るい体色で、脚が長くスマートな姿(写真3)から、コウカアブほど嫌われる存在ではないような気がする。そもそも両種とも、枯れた植物や生ゴミを土にかえす益虫なのだ。

脚が長いキイロコウカアブ
  • 写真3
  • キイロコウカアブ Ptecticus aurifer(ミズアブ科)
  • コウカアブ Ptecticus tenebrifer(ミズアブ科)

(斉藤明子)