フィールドノート No.2197

 2022/11/04(金)

 巻貝の殻口に付着するヒラフネガイの化石

 館山市内にて。この場所では、数千年前の内湾にたまった泥層が観察できる。崖下に巻貝の化石が落ちていたので、水洗いして泥を落としてみた(写真1)。

  • 写真1 コロモガイの化石(目盛りの単位はミリ)

 この紡錘形で殻の厚い巻貝はコロモガイだ。殻口をよく見ると平べったいものが入っている(写真2)。巻貝の殻口の壁面に沿うようにぴったりと付着している。正体を突き止めるために、平べったい物体をピンセットで取り出してみた。すると、巻貝の中から別な貝の化石が姿を現した(写真3)。

  • 写真2 コロモガイの殻口の壁面に付着するヒラフネガイ
  • 写真3 ヒラフネガイの化石(殻長は約2センチ) コロモガイの殻口から見える面を撮影

 これはヒラフネガイという貝で、一見すると二枚貝のようだが、巻貝の仲間らしい。付着面には、隔板と呼ばれる薄い仕切りがあり、スリッパのような見た目だ(写真4、5)。

  • 写真4 ヒラフネガイの化石 写真3をひっくり返した面(コロモガイの殻口の壁面に付着する面)を撮影
  • 写真5 ヒラフネガイの化石(黄色矢印は隔板) 写真4を左横から撮影

 ヒラフネガイは、現在の海でも生きている。ヤドカリが背負った巻貝の殻口の壁面に貼り付き、食事のおこぼれを利用して暮らしているらしい。通常、死んだ巻貝の貝殻は海底で砂や泥に埋もれてしまうことが多いが、ヤドカリが動き回ることで、ヒラフネガイは埋没を免れるという。巻貝の内部にヤドカリの化石は見当たらなかったが、この周辺からはヤドカリの化石も見つかるかもしれない。

  • コロモガイ Sydaphera spengleriana(コロモガイ科)
  • ヒラフネガイ Ergaea walshi(カリバガサガイ科)

(千葉友樹)