フィールドノート No.2204

 2022/11/17(木)

 ツルアリドオシ

 清澄山系にて。林道脇の崖に赤い果実が見えた(写真1)。

ツルアリドオシの赤い果実
  • 写真1

 ツルアリドオシである。以前紹介したアリドオシ(フィールドノートNo.2122)とは、同科の別属。ツルアリドオシの名前の由来は、「葉や花、果実がアリドオシに似ていてつる性だから」ということのようだが、アリドオシとはそれほど類縁は近くないらしい。実際、アリドオシの一番の特徴と言える鋭いトゲはツルアリドオシにはない。

 ツルアリドオシは、薄暗い林内の地面を這ったり、崖から垂れ下がるように生えていたりすることが多い。確かに葉の雰囲気や赤い果実はアリドオシに似ているが、なよなよとしたつるを見るとかなり違うなと思う(写真2)。

ツルアリドオシ
  • 写真2

 採集しようと近づいて果実をよく見ると、何かの痕のようなものが2つある(写真3)。

ツルアリドオシの赤い果実
  • 写真3

 花をまだ見たことがなかったので知らなかったが、ツルアリドオシの花は必ず2個つき、それぞれの花の基部にある子房が合着しているそうだ。この子房が大きくなって果実になるので、果実には萼(がく)の痕が2つ残るというわけだ。なぜ花が2個セットなのか不思議だ。どちらかしか受粉しなくても果実になるのだろうか。

 採集した果実を潰して種子を出してみた。もやもやとした表面模様の、やや扁平な丸形の種子だ。あまり特徴はない(写真4)。

ツルアリドオシの種子
  • 写真4

 私が担当する中央博物館の生態園は、房総の代表的な植生を再現する野外施設である。高木層はそれなりに森らしくなってきたが、林床はまだまだだ。アリドオシは植えてある(あまり元気はないが)ので、ツルアリドオシが近くにいたら比較できてよさそうである。2個セットの花や写真3のような果実が園内で見られることを願って、写真4の種子を蒔いて育ててみようと思う。

  • ツルアリドオシ Mitchella undulata(アカネ科)
  • アリドオシ Damnacanthus indicus(アカネ科)

(西内李佳)