フィールドノート No.2210

 2022/11/28(月)

 重厚な殻を持つヨロイガイの化石

 館山市内にて。この場所では、数千年前の内湾にたまった泥層が観察できる。存在感のある貝化石が地層から飛び出していた(写真1)。やさしくふれると、あっさり取れた。

  • 写真1 泥層から飛び出していたヨロイガイの化石(スコップの柄の長さは約10.5センチ、写真の上が地層の上位)

 水洗いして泥を落とすと、ヨロイガイと呼ばれる二枚貝だった(写真2、3)。殻表の布目状の彫刻が特徴的だ。殻は重厚で、確かに鎧を連想させる。

  • 写真2 ヨロイガイの化石(目盛りの単位はミリ)
  • 写真3 ヨロイガイの化石(目盛りの単位はミリ、写真2の内面)

 よく見ると、殻にきれいな丸い穴があいている(写真4)。肉食の巻貝類の中には、エサとなる貝類の殻に穴をあけて、中身を食べるものがいる。特にタマガイ科の肉食性巻貝は、殻の外側から内側に向かって先細りする穴をあけることが多く、写真4に似ている。

  • 写真4 ヨロイガイの化石にあけられた丸い穴(穴の直径は約6ミリ)

 こんなに厚い殻に穴をあけたとしたら驚きだ。貝殻は防御のためにあるというのが一般的な考えだが、鎧のような重厚な貝殻をもってしても、必ず身を守れるわけではないらしい。

 ヨロイガイは、紀伊半島以南の暖海で現在も暮らしている。本種の化石が地層中から見つかるということは、当時の館山の海が現在よりも暖かかったのかもしれない。

  • ヨロイガイ Antigona chemnitzii(マルスダレガイ科)

(千葉友樹)