フィールドノート No.2213

 2022/12/09(金)

 教室博物館のシミ

 旧三島小教室博物館にて。教室内で机上を走るシミを見つけた。体長は10ミリほど。飛ばないがとても早く走るので、プラシャーレを使って確保した(写真1)。これはヤマトシミという昆虫だ。

プラシャーレ内のシミ
  • 写真1

 シミ類は翅を持たず、原始的な特徴を残した昆虫で、生涯、ほとんど変態せずに脱皮を繰り返す。尾端には3本の尾があり、体は銀色の鱗粉(りんぷん)に覆われている。頭部の両側にある目はとても小さく、あまり目は良さそうではないが、常に長い触角を左右前後に動かして周囲の様子を探っている(写真2)

鱗粉に覆われたシミ
  • 写真2

 シミ類の内、数種は家屋性とされ、紙などを食べる。博物館では古文書類などの紙資料に被害を及ぼす害虫である。シミは紙の表面を薄く削り取って食べてしまう。古文書に深い穴を空ける甲虫のシバンムシ類の仕業に比べると穏やかな食害跡であるが、書かれている文字が消えてしまうので、古文書を読み解く人にとっては大きな被害となるのだ。

 以前、古い団地に住んでいた頃、畳の上を走るシミを見つけ、フィルムケースにティッシュペーパーの切れ端と共に入れておいたことがある。ティッシュペーパーは徐々にスカスカになり、シミは一年近く生きていた。

 今は外来種のセイヨウシミが世界中に拡がっていて、在来のヤマトシミは少なくなっているという。しかし、この古い教室のシミはきっと在来種に違いないと思い、文献(町田ほか,2006)を参考に調べてみると予想通りヤマトシミだった。博物館の害虫ではあるが、在来種が居てくれたことにさすが三島小と思った。

  • 【参考文献】
  • 町田龍一郎・増本三香(2006) 日本産家屋性シミ目の同定法. 家屋害虫27(2): 73-76.
  • ヤマトシミ Ctenolepisma villosa(シミ科)
  • セイヨウシミ Lepisma saccharina(シミ科)

(斉藤明子)