フィールドノート No.2218

 2022/12/15(木)

 ヒメコマツ調査

 君津市内にて。この日はヒメコマツの調査のため山に入った。ヒメコマツは千葉県以外では標高1,000メートル前後の山地に生育する。例外的に標高400メートル以下で温暖な房総丘陵に分布するヒメコマツは氷期の生き残りと考えられている。房総のヒメコマツは近年衰退が著しく、地域的な絶滅が危惧されている。私たちはそのヒメコマツの生育状況を確認するために定期的に現地調査を続けている。

 通い慣れた尾根でヒメコマツの枯れ木を発見した(写真1)。中程から二叉に分かれた幹が特徴的な個体。元気だった木が枯れているのを見つけるのは辛いことだ。

  • 写真1

 この木は数年前まで元気だった(写真2)。長く伸びた横枝に多くの針葉と球果をつけていた。枯れた原因は不明だが、いわゆる松枯れ(マツ材線虫病)の可能性もある。過去20年以上、こうして櫛の歯が欠けるように残り少ないヒメコマツの成木が減っていくのを目の当たりにしてきた。

  • 写真2 2015/2/12撮影

 しかし、悪いニュースばかりではない。新たな若木も見つかることがあるのだ(写真3)。

  • 写真3

 この若木は樹高196センチであった(写真4)。樹高130センチを目安として、これに満たないものを実生(みしょう)、これ以上に育ったものを若木と呼んでいる。小さな実生はそれなりの数が見つかるが、成長できずに枯れることが多い。しかし若木サイズにまで育ったものはそう簡単には枯れず、立派な成木に成長していくことが期待できる。この日の調査では枯れ木が2個体発見され、一方で新たな若木が5個体見つかった。よいニュースが悪いニュースを上回った。

  • 写真4
  • ヒメコマツ Pinus parviflora var. parviflora(マツ科)

(尾崎煙雄)