フィールドノート No.2222

 2022/12/21(水)

 オオウラジロノキ

 清澄山系にて。尾根に丸い果実がコロコロ落ちているのを見つけた(写真1)。

尾根に落ちていた丸い果実
  • 写真1

 直径は2~3センチほど。拾って観察しても、何の果実だかわからない。小さなリンゴのように見えるのでリンゴの仲間、少なくともバラ科かなと思っていたら、同行の先輩職員が「オオウラジロノキじゃないか」と教えてくれた。

 オオウラジロノキは、バラ科リンゴ属の落葉高木。本州~九州の山地の乾いた尾根にやや稀に生える。しかも、シイ・カシ帯上部~ブナ帯にかけて分布するため、高くても標高300メートル程度の房総丘陵で出会えるのはかなり珍しい。

 周囲をさらに探すと、果実がたくさん落ちていた(写真2)。

周囲にも落ちていたたくさんの果実
  • 写真2

 親の木はどれかと見回すと、それらしい木があった(写真3、4)。こんなに立派な果実をこんなにたくさんつけるのだから大きな木かと思っていたが、思いのほか細い木だったので驚いた。

  • 写真3 中央の白っぽい樹皮の木
  • 写真4

  葉はほとんど落ちていたが、かろうじて2~3枚残っていた(写真5)。

かろうじて残っていた葉
  • 写真5

 オオウラジロノキの名前の由来は、葉の裏に白い毛が密生していて白く見えるからである。ちなみに、ウラジロノキという木もあるが別属(バラ科アズキナシ属)。ウラジロノキと同様に葉裏が白く、果実が大きいことからオオウラジロノキと命名されたようだ。オオウラジロノキの枝に残った葉を採集して葉裏を拡大してみると、確かに毛が生えていて手触りも柔らかい感じ(写真6)。若い枝にも白い毛が生えていた(写真7)。

葉裏の拡大
  • 写真6
若い枝の白い毛
  • 写真7

 持ち帰った果実をナイフで半分に割ってみると、まるでリンゴのミニチュアのよう(写真8)。オオウラジロノキの果実は食べられるそうだ。拾ってすぐ囓ってみた時には、酸っぱいリンゴのような味は良かったが渋みがあって口の中がキシキシした。持ち帰って数日経った果実を再び囓ってみたが、やはりキシキシした。干せば渋みが抜けて美味しくなりそうである。「尾根のミニリンゴ」というキャッチコピーが頭に浮かんだ。

葉裏の拡大
  • 写真8
  • オオウラジロノキ Malus tschonoskii(バラ科)
  • ウラジロノキ Aria japonica(バラ科)

(西内李佳)