フィールドノート No.2224

 2022/12/24(土)

 クリスマスプレゼントは合弁のビノスガイ化石

 今日はクリスマスイブ。自分へのプレゼントを獲るために、市原市の化石産地を訪ねた。この場所では、約30万年前の内湾にたまった砂層が観察できる。先日の雨で崩れた土砂の中を探すと、大きな二枚貝の化石を見つけた(写真1)。

  • 写真1 崩れた土砂の中から見つけた二枚貝の化石

 刷毛で砂をはらうと、殻長約9センチの大きなビノスガイで、しかも二枚の殻が合わさった状態だった(写真2、3)。

  • 写真2 写真1を刷毛で掃除すると見事な合弁のビノスガイの化石が現れた(目盛りの単位はミリ)
  • 写真3 写真2の標本を裏返したもの

 フィールドノートNo.2212でも紹介したとおり、本種は現在も東北地方や北海道の寒い海で暮らす二枚貝だ。生時は砂底に浅く潜って、海水中の有機物を海水ごと吸い込んで食べている。ビノスガイのように海底に浅く潜る二枚貝類は、死後に波浪や潮流などによって貝殻が掘り出され、海底に露出し、流されることが多い。流される距離が長くなると、二枚の貝殻をつなぎとめる靭帯(じんたい)と呼ばれる部位が切れて、二枚の殻がバラバラ(離弁)になる傾向がある。一方で、二枚の殻が合わさった状態(合弁)の二枚貝化石が多い場合は、生息地から大きく移動していないと考えられる。この場所のビノスガイの化石は離弁で見つかることが多いが、写真2のような合弁も見られるため、生息地からどの程度移動したものか、解釈が難しい。

 大きなビノスガイを刷毛で掃除している途中、小さなビノスガイも見つけた(写真4)。成長すると殻長10センチに達するビノスガイも、幼貝のときはこんなにも小さくてかわいらしい。今日は素敵なクリスマスプレゼントが獲れて、良い日だった。

  • 写真4 小さくてかわいらしいビノスガイの化石(殻長は約7ミリ、手の小指にのせて撮影)
  • ビノスガイ Mercenaria stimpsoni(マルスダレガイ科)

(千葉友樹)