フィールドノート No.2227

 2023/01/12(木)

 根返りしたクヌギの大木

 鋸南町の津辺野山に登った。標高は259メートル、独立峰で房州低名山(ぼうしゅうひくめいざん、と読むらしい)のひとつとされている。山頂へ続く尾根上には倒木が次々と横たわっていた。中でも特大の倒木がこのクヌギの大木だ(写真1)。

  • 写真1 クヌギの大木が倒れていた

 根返りした根元部分の裏側は、横幅およそ6メートル、高さ3メートルの土の壁となっていた(写真2、3)。

  • 写真2 根元の裏側は土の壁となっていた
根元の裏側は土の壁となっていた
  • 写真3

 倒れたクヌギの根と共に土壌が持ち上げられたため、壁の前には大穴が空いていた(写真4)。

  • 写真4 根元に空いた大穴

 2019年秋の台風の強風により、房総半島では多くの木々が折れたり倒れたりした。その後、房総丘陵の各地で多くの倒木を見てきたが、その中でもこのクヌギの根返り部分は最大サイズだ。高宕山や清澄山系の痩せ尾根で見られる倒木は、生育していた場所の土壌が薄いために根が地面からはがれるように倒れている場合が多い。しかし、この大量の土壌を巻き込んだ根返りを見ると、このクヌギは厚い土壌に深く根を張っていたようだ。こんな大木を倒す強風の力はどんなものなのだろうか。倒れる瞬間を目撃してみたいが、そんな強風では先に自分の身体が吹き飛ばされて、見ることは叶わないのだろうな、などと妄想してしまった。

  • クヌギ Quercus acutissima(ブナ科)

(斉藤明子)