フィールドノート No.2229

 2023/01/20(金)

 かわいらしい形、ネコノアシガキの化石

 富津市内にて。この場所では、数千年前の内湾にたまった砂層が観察できる。見慣れないカキの化石を見つけた(写真1、2)。

  • 写真1 ネコノアシガキの化石(目盛りの単位はミリ)
  • 写真2 ネコノアシガキの化石(写真1と同じ標本の内面)

 太い畝を持ち、殻の縁辺部では間隔を置いた突起になる。このかわいらしい形は猫の足にたとえられ、ネコノアシガキと呼ばれている。現在の日本国内では有明海や瀬戸内海で貝殻が見られるだけで、生きた個体は消滅した可能性が高いと考えられている。日本国内の貝類図鑑にも載っていないことが多い。そんなネコノアシガキの化石が富津から見つかったので、驚いてしまった。どうやら数千年前の富津には、ネコノアシガキが暮らしていたらしい。かわいらしい見た目や分布の時間的変化など、魅力の尽きないカキだ。

  • ネコノアシガキ Talonostrea talonata(イタボガキ科)

(千葉友樹)