フィールドノート No.2234

 2023/02/02(木)

 まるでビート板、イカの貝殻の化石

 館山市内にて。この場所では、数千年前の内湾にたまった砂層が観察できる。崖下に平べったい石のようなものが落ちていた。手のひらに載せると、大きさの割に軽い(写真1)。

  • 写真1 崖下で拾った平べったい石のような物体

 水洗いして砂を落としてみると、コウイカの仲間の貝殻だった(写真2、3、4、5)。コウイカの仲間は、名前の通り、甲(こう)と呼ばれる石灰質の貝殻を持っている。ただし、コウイカの仲間の貝殻は体の中にあるので、生きているときは外から見えない。完全な貝殻はサーフボードのような形をしているが、今回見つけた化石は割れているので、ビート板のような見た目だ。

  • 写真2 コウイカの仲間の貝殻の化石(白色三角は写真3、4、5の撮影方向)
  • 写真3 コウイカの仲間の貝殻の化石(目盛りの単位はミリ)
  • 写真4 コウイカの仲間の貝殻の化石(目盛りの単位はミリ)
  • 写真5 コウイカの仲間の貝殻の化石(割れた断面)

 コウイカの仲間の貝殻には、浮力を調整する役割がある。割れた断面を見ると、細かく仕切られた部屋がたくさん見られ、隙間が多い(写真5)。大きさの割に軽いのも納得だ。水を張ったお椀に入れてみると、ぷかぷかと浮いた(写真6)。もうビート板にしか見えない。

  • 写真6 水にぷかぷか浮いた

 現在の海岸で貝殻拾いをすると、コウイカの仲間の貝殻がよく拾える。一方で、地層中から化石が見つかることはあまり多くない。ぷかぷかと水に浮くコウイカの仲間の貝殻は、海底の砂や泥に埋もれにくいため、化石としてあまり残らないのだろうか。

(千葉友樹)