フィールドノート No.2237

 2023/02/19(日)

 雨後の地層で見つけたカニの化石

 館山市内にて。この場所では、数千年前の内湾にたまった泥層が観察できる。先日の雨で泥層の表面が洗われて、観察しやすくなっていた。今日は、カニ化石に詳しい同僚と一緒なので、カニ化石がたくさん見つかる予感がした。早速、平べったいカニの化石を見つけた(写真1)。フィールドノートNo.2178でも紹介したノコハオサガニというカニで、この場所ではよく見られる。

  • 写真1 泥層中のノコハオサガニの化石(スコップの刃の長さは約6センチ、地層の水平面を見ていることに注意)

 今度は丸みのある四角形の甲羅を持ったカニを見つけた(写真2)。今にも泥層から泳いで出てきそうな生々しい化石だ。これはメクラガニモドキ属の一種で、分類が難しい。

  • 写真2 泥層中のメクラガニモドキ属の一種の化石(スコップの刃の幅は約2.5センチ、地層の水平面を見ていることに注意)

 この場所のカニ化石は甲羅と脚がつながっていることが多く、保存状態が良い。カニの化石は、甲羅と脚がバラバラの状態や丈夫なハサミだけが見つかる場合も多いので、今回の事例は興味深い。死後、泥底にすぐに埋もれ、波浪によって掘り出されることもなかったのだろうか。この場所は波静かな内湾だったのかもしれない。

  • ノコハオサガニ Venitus latreillei(オサガニ科)
  • メクラガニモドキ属の一種 Typhlocarcinops sp.(ケブカガニ科)

(千葉友樹)