フィールドノート No.2238

 2023/02/24(金)

 カニの仕業?壊れた巻貝の化石

 館山市内にて。この場所では、数千年前の内湾にたまった砂層が観察できる。この日は、水玉模様の美しい巻貝の化石を見つけた(写真1)。

  • 写真1 砂層中のバイの化石(スコップの柄の長さは約10.5センチ、写真の上が地層の上位)

 これはバイと呼ばれる巻貝だ。現在の東京湾でも生きた個体が見られる。煮つけにするとおいしい巻貝だ。生きているときは殻皮(かくひ)という茶色っぽい薄い皮で覆われているが、今回見つけた化石は殻皮がはがれている。水玉模様が美しい(写真2)。

  • 写真2 水玉模様が美しいバイの化石(目盛りの単位はミリ)

 殻口が壊れたバイの化石も拾えた(写真3)。貝殻は少し擦れていて、水玉模様がはっきりしない。同じ巻貝でも、状態によって模様の見え方は様々だ。

  • 写真3 殻口が壊れたバイの化石(目盛りの単位はミリ)

 殻口から巻きをたどってみると、巻きに沿ってギザギザの切れ込み状に貝殻が壊れている(写真4、5)。貝殻が石とぶつかって壊れただけかもしれないが、カニが巻貝を食べる時にこのようなギザギザの切れ込みをつくることがある。カニに捕まった巻貝は、食べられないように中身を貝殻の中に引っ込める。すると、カニはハサミを使って、殻口から巻きに沿って貝殻を壊し始める。巻貝に見られるギザギザの切れ込みを見ていると、カニと巻貝の攻防を想像してしまう。完全な化石は魅力的だが、壊れた化石にも別な魅力がある。

  • 写真4 殻口が壊れたバイの化石(写真3と同じ標本を巻き方向に遡って撮影)
  • 写真5 殻口が壊れたバイの化石(写真3、4と同じ標本をさらに巻き方向に遡って撮影)
  • バイ Babylonia japonica(バイ科)

(千葉友樹)