フィールドノート No.2261

 2023/05/26(金)

 切り株で見えたもの

 清和県民の森の自然散策路にコナラの切り株があった。ルーペで見ると、小さな穴が並んでいる。道管だ。コナラやミズナラの大きな道管は毎年春に作られるので、年輪状に並んでいる。道管の役割は、根が吸った水を樹木全体に届けることだが、コナラでは、水が通っているのは、白く見える木材部分(木部)の一番外側に並んでいる、今年つくられた道管に限られるという。木部の外側を覆う赤茶色の部分は師管の通っている師部と樹皮(写真1)。

  • 写真1 

 こちらの切り株は、アカマツのもの。右側の切れ込みは、「受け口」とよばれ、こちらの方向に倒れるように最初に切り取られる。次に反対側から水平に「追い口」と呼ばれる切り込みを入れると、木は「受け口」の方向に倒れていく。この株では、何らかの理由で受け口を上方に入れ直して切っているようで、使われなかった「受け口」がそのまま残っている(写真2)。

  • 写真2 

 アカマツの幹の断面(写真3)。コナラのような広葉樹に見られる道管は針葉樹のアカマツには見当たらない。針葉樹の幹は木を支えることと水を運ぶことの両方を行う「仮道管」で満たされている。残念ながら仮道管の直径は20-30ミクロンなのでルーペでは確認できない。春から夏にできる仮道管は太く、夏から秋にできる仮道管は細いので、その差が年輪として見えている。

  • 写真3 

 ちなみにコナラなど広葉樹の道管は、太いもので300ミクロン、つまり0.3ミリ程度。金槌の柄や家具などの、表面を磨き上げられた材ならば肉眼でも確認できる。

  • コナラ Quercus serrata(ブナ科)
  • ミズナラ Quercus crispula var. crispula(ブナ科)
  • アカマツ Pinus densiflora(マツ科)

(斎木健一)