フィールドノート No.2285

 2023/08/18(金)

 よく見ると違う、トリガイとエマイボタンの化石

 館山市内にて。この場所では、数千年前の内湾にたまった砂層が観察できる。トリガイと呼ばれる二枚貝の化石が足元にたくさん落ちていたので、標本として持ち帰った。

 自宅で化石を水洗いすると、トリガイによく似たエマイボタンが含まれていることに気付いた。トリガイとエマイボタンは同じ貝のように見えるが、よく見ると違う。エマイボタンは後方に殻が伸びるため、トリガイよりも横長だ(写真1、2)。また、エマイボタンの方が肋数が少ない。

  • 写真1 トリガイ(目盛りの単位はミリ)
  • 写真2 エマイボタン(目盛りの単位はミリ)

 二枚の殻がそろった標本を拾うことができたので、殻を合わせてみた。すると、エマイボタンの方が後端が大きく開く(写真3、4)。

  • 写真3 トリガイの後端の開き具合(写真1と同じ標本、目盛りの単位はミリ)
  • 写真4 エマイボタンの後端の開き具合(写真2と同じ標本、目盛りの単位はミリ)

 さらに、トリガイの前方の放射肋の間はツルツルだが、エマイボタンには小さな粒々がある(写真5、6)。

  • 写真5 トリガイの放射肋の間(写真1と同じ標本)
  • 写真6 エマイボタンの放射肋の間(写真2と同じ標本)

 今回のように、1種類と思っていた中に複数の種類が混ざっていることはよくある。化石は多めに持ち帰って、自宅でじっくり観察するのが良さそうだ。

  • トリガイ Fulvia mutica(ザルガイ科)
  • エマイボタン Fulvia aperta(ザルガイ科)

(千葉友樹)