フィールドノート No.2286

 2023/08/18(金)

 形はタケノコにそっくり、タケノコガイ類の化石

 館山市内にて。この場所では、数千年前の内湾にたまった砂層が観察できる。足元に細長い巻貝の化石が落ちていたので、標本として持ち帰った(写真1)。

  • 写真1 細長い巻貝の化石(目盛りの単位はミリ)

 タケノコガイ類の化石だ。漢字で書くと、筍貝。形はタケノコに似ている。地面から出てきたばかりのやわらかいタケノコよりも、伸び過ぎて硬くなったタケノコの形にそっくりだ(写真2)。

  • 写真2 伸び過ぎて硬くなったタケノコ(撮影:2021/4/21、撮影場所:君津市の竹林、黄色の折尺の長さは100センチ)

 タケノコガイ類は暖かい海で種類が多く、殻表面に美しい彫刻を持つものが多い。タケノコガイ類の化石をよく観察すると、彫刻の特徴が異なり、複数の種類が含まれていた。写真1の左側は、ヒメトクサ。明瞭な縦肋(じゅうろく:縦方向の彫刻)が特徴だ(写真3)。

  • 写真3 ヒメトクサの彫刻(目盛りの単位はミリ、写真1と同じ標本)

 写真1の中央は、イボヒメトクサ。明瞭な縦肋はイボ状になる(写真4)。

  • 写真4 イボヒメトクサの彫刻(目盛りの単位はミリ、写真1と同じ標本)

 写真1の右側はシラタケ。縦肋と螺肋(らろく:横方向の細かい彫刻)の組み合わせが特徴だ(写真5)。

  • 写真5 シラタケの彫刻(目盛りの単位はミリ、写真1と同じ標本)

 タケノコ型の特徴的な形に加えて、殻表面に美しい彫刻もそなえるタケノコガイ類。春の野山でタケノコを見つけるとうれしくなるように、化石産地や海岸でタケノコガイ類を拾うとうれしくなってしまう。

  • ヒメトクサ Punctoterebra japonica(タケノコガイ科)
  • イボヒメトクサ Granuliterebra bathyrhaphe(タケノコガイ科)
  • シラタケ Punctoterebra subtextilis(タケノコガイ科)

(千葉友樹)