フィールドノート No.2289

 2023/09/15(金)

 タイラギを母貝とする真珠の化石

 山武郡にて。この場所では数千年前の内湾にたまった砂泥層が観察できる。崖下に貝化石の破片が落ちていたので、拾い集めた(写真1)。これはタイラギと呼ばれる二枚貝だ。殻はもろく、はがれやすい。

  • 写真1 タイラギの化石(目盛りの単位はミリ)

 殻の内面を観察すると、デコボコが見られた(写真2)。

  • 写真2 デコボコ(目盛りの単位はミリ、写真1の内面)

 写真2の矢印部分を拡大すると、半球状の物体が見られた(写真3)。真珠の化石だ。

  • 写真3 真珠の化石(真珠の直径は約2ミリ)

 真珠は、貝類の体内に形成される炭酸カルシウムを主成分とする球状~半球状の固まりのことだ。その成因は複雑で、砂などの核となる物質の侵入や外部からの刺激など様々らしい。写真1、2を見ると、デコボコが形成されているのは、貝殻の外側から内側にくぼんでいる場所の周辺だ。この事例は、外部からの刺激が真珠形成のきっかけになったと考えたくなる。

 真珠の母貝として有名なアコヤガイのように、貝殻の内面に真珠層と呼ばれる光沢のある層を形成する貝類では、美しい真珠ができる。タイラギも真珠層を持つ二枚貝で、その真珠は光沢があり、やはり魅力的だ。タイラギの殻内に形成された真珠の破断面を見ると、真珠層が繰り返し形成されている(写真4)。真珠がしだいに大きくなったことがわかる。

  • 写真4 真珠の破断面(真珠の直径は約5ミリ)

 殻を持つ貝類であれば、どの貝類でも真珠ができる可能性がある。海岸に落ちている貝殻にも、小さな真珠が付いていることがある。その気になって探すと、意外と見つかる。

  • タイラギ Atrina pectinata(ハボウキガイ科)
  • アコヤガイ Pinctada fucata martensii(ウグイスガイ科)

(千葉友樹)