フィールドノート No.2295

 2023/10/20(金)

 二枚の殻で膨らみが違う、イタヤガイの化石

 館山市内にて。この場所では、数千年前の内湾にたまった泥層が観察できる。崖下に大きな二枚貝の化石が落ちていたので、拾ってみた。合弁(二枚の殻が合わさった状態)のイタヤガイの化石だ(写真1)。

  • 写真1 合弁のイタヤガイの化石(目盛りの単位はミリ)

 二枚貝は文字通り二枚の殻を持つが、それぞれの特徴が異なる種類がいる。イタヤガイはその好例だ。二枚の殻を比較すると、片方は白色だがもう片方は赤色だ(写真2)。

  • 写真2 イタヤガイの二枚の殻の比較(写真1と同じ標本)

 横から見ると、白色の殻は膨らみが強い。赤色の殻は扁平で、殻頂(尖っているところ)付近はむしろ凹んでいる(写真3)。

  • 写真3 イタヤガイの二枚の殻の比較(写真1と同じ標本)

 以前、野外観察会の参加者に合弁のイタヤガイの化石を見せたことがある。すると、同じ種類の貝とは思えないくらい二枚の殻が違う! と驚く方が多かった。確かに、殻が離れた状態で別々に見つかったら、別な種類と勘違いしてしまいそうだ。合弁の貝化石は、それぞれの殻の違いを把握できる点で貴重だ。

  • イタヤガイ Pecten albicans(イタヤガイ科)

(千葉友樹)