フィールドノート No.2297

 2023/10/26(木)

 ヤツシロガイ、ウズラミヤシロ、トキワガイの化石

 館山市内にて。この場所では、数千年前の内湾にたまった泥層が観察できる。ヤツシロガイと呼ばれる巻貝の化石が足元に落ちていたので、標本として持ち帰った(写真1)。

  • 写真1 ヤツシロガイの化石(目盛りの単位はミリ)

 球形の殻と丸みのある螺肋(らろく:横方向に生じる畝(うね)状の盛り上がりのこと)が特徴だ。自宅で化石を水洗いしていると、ヤツシロガイによく似たウズラミヤシロ(写真2)とトキワガイ(写真3)が含まれていた。

  • 写真2 ウズラミヤシロの化石(目盛りの単位はミリ)
  • 写真3 トキワガイの化石(目盛りの単位はミリ)

 トキワガイはこの中で最も殻が厚く、手に持った時に重い。螺肋の特徴も異なり、ヤツシロガイは螺肋同士の間隔が狭いが、ウズラミヤシロとトキワガイは広い(写真4~6)。

  • 写真4 ヤツシロガイの螺肋(写真1と同じ標本)
  • 写真5 ウズラミヤシロの螺肋(写真2と同じ標本)
  • 写真6 トキワガイの螺肋(写真3と同じ標本)

 1種類で構成されると思っていた中に、複数種が存在することはよくある。大体の場合は2種類が混在しているのだが、今回は3種類だったので得した気分になった。現地で砂や泥が付いた状態の化石を見ても、意外と気付かない。多めに化石を持ち帰って、自宅でじっくり観察するのが良さそうだ。

  • ヤツシロガイ Tonna luteostoma(ヤツシロガイ科)
  • ウズラミヤシロ Tonna marginata(ヤツシロガイ科)
  • トキワガイ Tonna allium(ヤツシロガイ科)

(千葉友樹)