フィールドノート No.2232

 2023/12/09(土)

 二枚の殻で凹凸が違う、モトリニシキの化石

 市原市内にて。この場所では、約30万年前の内湾にたまった砂層が観察できる。崖下でモトリニシキの化石を拾った(写真1、2)。

  • 写真1 モトリニシキの化石
  • 写真2 モトリニシキの化石(写真1と同じ標本の内面)

 殻長は7ミリくらい。ホタテガイのような形の貝だ。殻表面には放射状の縦肋(畝状の盛り上がり)が見られ、縁辺部では鱗片状の突起がある(写真1)。

 しばらく化石を探すと、ホタテガイのような形の貝化石をもうひとつ見つけた(写真3、4)。殻長は7ミリくらい。殻表面には同心円状の横肋があるが、内面の縁辺部には内肋と呼ばれる縦肋(写真4の黄色矢印)が見える。これも、モトリニシキの化石だ。

  • 写真3 モトリニシキの化石
  • 写真4 モトリニシキの化石(写真3と同じ標本の内面)

 モトリニシキの名前は、二枚の殻表面の凹凸が違うことにちなむ。漢字で書くと悖り錦。「悖」は、「たがう」の意味だ。化石では二枚の殻が離れた状態で別々に見つかることが多く、かつてはそれぞれの殻が別種と考えられたことがあった。

 モトリニシキは、現在の海でも生きた個体が報告されている。白・黄・橙・赤色の組み合わせで殻が彩色されることがあるらしい。名前にある「錦」にふさわしいが、化石では色が抜けてしまうのが残念だ。

  • モトリニシキ Parvamussium intuscostatum(ワタゾコツキヒ科)

(千葉友樹)