フィールドノート No.2233

 2023/12/09(土)

 砂浜で形成された地層を剥ぎ取る

 市原市内にて。この場所では、約40万年前の地層が観察できる。同僚のKさんが、ねじり鎌を使って地層の表面を削り始めた(写真1)。

  • 写真1 ねじり鎌を使って地層の表面を削る

 すると、平行~緩傾斜の美しい縞模様と白斑状の模様が見えるようになった(写真1)。

  • 写真2 平行~緩傾斜の美しい縞模様と白斑状の模様(写真の幅は約35センチ)

 このような特徴的な堆積物は、砂浜でよく見られる。平行~緩傾斜の縞模様は、砂浜に寄せる波と返す波によって形成される。白斑状の模様は、ゴカイの仲間が砂の中を動いた痕跡だ。

 この見事な地層を室内に持ち帰ってじっくり観察したい。今日の目標は、この地層を剥ぎ取って標本を製作することだ。まずは、ねじり鎌を使って剥ぎ取りたい面を平坦に整える(写真3)。

  • 写真3 剥ぎ取りたい面を平坦に整える

 次に、薬剤を地層に塗る(写真4)。薬剤の粘性が高いので、均等に塗るのは意外に難しい。

  • 写真4 薬剤を地層に塗る

 続いて、裏打ち材を貼り、地層と裏打ち材を密着させる(写真5)。隙間ができると、その部分の地層がうまく剥ぎ取れなくなってしまう。薬剤はすぐに固まり始めてしまうので、手早くかつ正確に作業を進める必要がある。

  • 写真5 たわしを使って地層と裏打ち材を密着させる

 剥ぎ取る面に裏打ち材を貼り終わったら、薬剤が完全に固まるまで待つ(写真6)。

  • 写真6 薬剤が完全に固まるまで待つ

 薬剤が固まった後、いよいよ地層を剥ぎ取る。きれいに剥ぎ取れるか、緊張の一瞬だ。裏打ち材の上端を二人で持ち、ゆっくりと地層を剥ぎ取る(写真7)。

  • 写真7 地層を剥ぎ取る

 剥ぎ取り標本を博物館に持ち帰ったら、水洗して固着していない粒子を洗い流す(写真8)。プロが作った地層の剥ぎ取り標本(フィールドノート No.2275)には及ばないが、まあまあの出来だ。

  • 写真8 ジョウロを使って固着していない粒子を洗い流す

 剥ぎ取った標本は、野外で見る地層と左右が逆転するが、地層を構成していた粒子の実物だ。粒子の配列や積み重なった順番も写し取られる。何かの機会に展示できれば幸いだ。

(千葉友樹)