フィールドノート No.2238

 2024/02/16(金)

 すぐ割れる、ヤマホトトギスの化石

 館山市内にて。この場所では、数千年前の内湾にたまった泥層が観察できる。泥層から細長い二枚貝の化石が飛び出していた(写真1)。

  • 写真1 細長い二枚貝の化石(スコップの刃の幅は約2.5センチ)

 やさしくなでていたら、地層から分離したので、標本として持ち帰った。水洗いすると、ヤマホトトギスの化石だった(写真2)。

  • 写真2 ヤマホトトギスの化石(目盛りの単位はミリ)

 地層から分離したときに、片方の殻が割れてしまった。貝殻は紙のように薄く、割れやすいのも納得だ。ボンドで接着しようと思ったのだが、殻が薄過ぎて接着できそうにないのであきらめた。こんなに薄い貝殻がよく化石に残ったと感心してしまう。殻表面には波状の褐色斑と細かい肋が見られ、大変美しい(写真3)。

  • 写真3 波状の褐色班と細かい肋

 殻内面は、まばゆいばかりの真珠光沢だ(写真4)。

  • 写真4 真珠光沢

 割れやすく繊細な殻に加え、美しい色模様と光沢を併せ持つとは、なんて可憐な貝。当館の貝化石コレクションの中には、ヤマホトトギスの登録標本がひとつも見当たらない。標本登録して、収蔵庫で大切に保管する予定だ。

  • ヤマホトトギス Arcuatula japonica(イガイ科)

(千葉友樹)