フィールドノート No.2455

 2026/8/30(日)

 ショウジンガニ

8月、南房総の磯を干潮時に歩いていると、浅瀬にショウジンガニが佇んでいた。このカニは動きが素早く、普段は人が近づくと岩陰や転石の間に逃げ隠れてしまうため、開けた場所でぼんやりしているのを珍しく思い、写真を撮影した。

    写真 ショウジンガニ

多くの海の動物は、幼生期はプランクトンとして海を漂って過ごす。カニ類では、卵からゾエア幼生、メガロパ幼生を経て、着底して稚ガニとなる。ゾエア幼生はカニらしからぬ姿だが、メガロパ幼生はカニに近い姿になる。メガロパ幼生は一般的には5mmに満たない大きさだが、ショウジンガニでは1cmを超えるサイズになり、磯で見るとちょっと変わったカニがいるようにも見える。

    写真 ショウジンガニのメガロパ幼生(撮影:監物うい子)

ショウジンガニのメガロパ幼生は、4月から5月頃に磯にやってきて、稚ガニになっていく。写真は4月下旬に銚子で撮影されたもので、この日は沢山のメガロパ幼生が観察された。冒頭のカニは大きさからして、この春に着底したものだろう。寿命は3年程度とされており、成長につれ深場に移動していく。

ショウジンガニは千葉で「いそっぴ」と呼ばれ親しまれている。可食部は大きくないが、味噌汁に入れると良い出汁が出て美味しい。モクズガニの「ズガニ汁」「ガン汁」のように、すり潰して汁にすることもあるそうだが、それはまだ食べたことがない。

  • ショウジンガニ Plagusia dentipes (イワガニ科)
         

(村田明久)