終了報告書付録 展示の後日談・・・他館で五百沢氏山岳画紹介展示が続く (2009年度現在) | |
千葉県立中央博物館の「山の科学画」展が終了した後、 全国のいくつかの博物館等で、 五百沢智也氏の山岳鳥瞰図を基にした大小5回の展示会が行われた。 それらはひとつの展示をいくつかの博物館で順番に行う巡回展とは異なり、 展示の素材は同じであるが、 それぞれの博物館が独自の視点で、展示内容を創作したもので、 博物館展示の新しい形態として注目される。 各博物館等の展示概要は以下の通りである。 なお山の科学画展開催の2年前に、 長野県安曇村で五百沢氏の鳥瞰図をテーマにした最初の展示会が行われており、 その概要も併せて紹介する。 |
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1.安曇村資料館(長野県安曇村〔現松本市〕) にて |
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企画展:「山を調べ山を描く 五百沢智也展」 開催期間:2004年7月30日~8月22日 会場:安曇村資料館 概要: 長年にわたって地図作り、氷河地形研究、地理研究を行ってきた五百沢智也氏の鳥瞰図や地図、 スケッチやフィールドノートなどを、北アルプスとネパールヒマラヤを対象とする作品を中心に展示した。 槍穂高連峰など五百沢氏の代表的な作品の地元として、五百沢氏の鳥瞰図を初めて総括的に紹介し、 山の科学画展開催のきっかけとなった。 開催に先立ち、五百沢氏による講演会「山を調べ山を描く」が行われた。 |
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![]() 安曇村資料館 |
![]() 展示風景 地貌図ほか 地貌図で日本全体集成を初めて展示 |
2.立山カルデラ砂防博物館(富山県中新川郡立山町) にて |
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特別展:「山の図譜―氷の山・火の山」 開催期間:2007年9月8日(土)~10月8日(月) 会場:立山カルデラ砂防博物館企画展示室 後援:千葉県立中央博物館 概要: 五百沢智也氏の山岳鳥瞰図の素材となった北アルプス立山連峰の地元博物館としての地の利を活かし、 『鳥瞰図譜』などに掲載された日本アルプスの山岳鳥瞰図の原画のうち、“火の山”として立山・焼岳を、 “氷の山”として剱岳、薬師岳・黒部五郎岳、槍・穂高岳、鹿島槍ケ岳、白馬岳を中心に展示を行った。 またこの展示会のために新たに立山カルデラの彩色鳥瞰図が描かれ、紹介された。 展示期間中には、五百沢氏による講演「山の科学画―山を調べ・山を描く」も行われた。 |
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![]() 立山カルデラ砂防博物館 |
![]() パンフレット表紙 |
![]() 展覧会のために新たに製作された立山カルデラの彩色原画 |
![]() 講演「山の科学画―山を調べ・山を描く」 講演する五百沢智也氏 |
3.(株)ナカニシヤ出版(京都市) にて |
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「山と氷河の図譜」展 開催期間:2007年10月1日~10月31日 会場:ジュンク堂書店池袋店7F 概要: 山の科学画開催に合わせて出版された五百沢智也著「山と氷河の図譜」のナカニシヤ出版が、 出版記念として五百沢氏の代表的な作品の原画を、ジュンク堂書店池袋店の展示コーナーで紹介した。 |
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4.山形大学附属博物館・(財)山形県生涯学習文化財団(山形県山形市) にて | |
特別展:「山形大学が読み解く五百沢智也の世界 Part Ⅰ 山の学び山を描く-日本アルプス・ヒマラヤを中心に」 開催期間:2007年12月1日~12月23日 会場:山形県郷土館文翔館ギャラリー 協力:千葉県立中央博物館 概要: 五百沢氏の故郷である山形県において、山形大学附属博物館と山形県生涯学習文化財団主催の展示会が 2007年と2008年の2回、それぞれ異なった切り口で行われた。 2007年のPartⅠは、山形大学附属博物館が中心となり、 地元山形が生んだ山岳地形学者・鳥瞰図作家としての五百沢智也氏を広く紹介し、 日本アルプスやヒマラヤを中心に、五百沢氏の代表的な作品をその描き方と共に展示した。 また五百沢氏の記念講演会や、特別展記念シンポジウム「山地の地形景観を読む-山形・日本アルプス・ヒマラヤ-」が行われた。 |
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![]() 会場となった山形県文翔館(国の重要文化財) |
![]() 文翔館での展示風景 |
![]() 特別展記念シンポジウム「山地の地形景観を読む-山形・日本アルプス・ヒマラヤ-」シンポジウム風景 (満席となった) |
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5.(財)山形県生涯学習文化財団・山形大学附属博物館(山形県山形市) にて |
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特別企画展「五百沢智也の世界 Part Ⅱ 五百沢智也が描くふるさとの山」 開催期間:2008年10月25日~12月14日 会場:山形県郷土館文翔館ギャラリー 協力:千葉県立中央博物館 概要: 五百沢智也の世界 Part Ⅱとして、山形県生涯学習文化財団が中心となり、五百沢氏が幼少の頃から慣れ親しみ、 青春時代を育んできたふるさとの山々を克明に描いた作品を、山域ごとに選び系統的に展示した。 またこの特別展のために新たに描いた飯豊・朝日連峰などの新作4点が公開された。 展示期間中にはシンポジウムが開催され、五百沢智也の世界 Part Ⅰ、Ⅱの展示図録などが制作された。 |
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![]() 山形の山を描いた新作4点の1つ |
![]() 展示図録 全137pの本格的図録 |
6.産業技術総合研究所 地質標本館(茨城県つくば市) にて | |
地質標本館特別展「五百沢智也 山のスケッチとフィールドノート」 開催期間:2009年4月14日~7月5日 会場:地質標本館企画展示室 協力:千葉県立中央博物館 概要: 日本で唯一の地学専門の博物館としての特性を活かし、五百沢智也氏の一連の作品を展示すると共に、 槍穂高連峰や富士山などの鳥瞰図から読み取れる地形や地質を詳しく解説し、 これらの作品が、地層の境界や岩石の微妙な違いを反映した地形を見事に描写していることを示した。 また五百沢智也氏の仕事の基礎となったフィールドノートに注目し、何をどのように書いているかヒマラヤの調査記録を例に紹介した。 展示は対象地域によって、 Ⅰ期:北アルプスの山々(4/14~5/10)、 Ⅱ期:東北の山々(5/12~6/7)、 Ⅲ期:ヒマラヤの山々(6/9~7/5)ごとに入れ替え、開催期間中2度の特別講演会が行われた。 また展示図録も製作された。 |
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![]() 地質標本館 |
![]() 鳥瞰図から読み取れる地形や地質を解説 |
![]() ヒマラヤ調査のフィールドノート(実物) |
![]() 無料の展示図録 全31p。充実した解説で好評 |
<取材協力> 安曇村資料館(現 松本市安曇資料館) 立山カルデラ砂防博物館 (株)ナカニシヤ出版 山形大学附属博物館 (財)山形県生涯学習文化財団 産業技術総合研究所 地質標本館 |