千葉県立大利根博物館 特集 さわらのホタル


夏の風物詩にもなっているホタルを紹介します。
 大利根博物館では、佐原市加藤洲にお住まいの杉本武申さんのご協力によりヘイケホタルの幼虫740匹を観察水田に放流してみました。このホタルは杉本さんが、卵から孵(かえ)して育て上げたものです。自然回復のささやかな実験ですが、成功を期待しています。

 世界には2000種以上のホタルがいるといわれています。このうち日本には約40種が生息し、ゲンジホタルとヘイケホタルがよく知られています。ゲンジホタルは日本の固有種で、からだも大きく(2aくらい)、強い光をゆっくり放ちます。ヘイケホタルはゲンジホタルに比べるとからだも小さく(1aくらい)、淡い光で点滅します。


☆ホタルの発光

ホタルはおしりの部分に発光器があり、雄と雌が出会ったり、求愛するために発光します。発光のしくみは、発光器の中にルシフェリンという化学物質があってルシフェラーゼという酵素の働きによって酸素と結びついて発光します。
エサのタニシをまく杉本武申さん

☆ホタルの一生(ヘイケホタル)


○5月下旬 幼虫は水中から上陸して土の中にもぐり、土繭(つちまゆ)を作りサナギになります。
○7月中旬頃 土の中でサナギから成虫になり、地表にでてきます。成虫の寿命は10日前後といわれています。この時期、雌は草の根元などで光っています。雄は活発に飛び回って光を出しながら結婚相手をさがします。葉の裏や草の根元に産みつけられた卵は1ヶ月後ふ化し、幼虫は水中で生活を始めます。田んぼで生まれた幼虫は、水がなくなると土の中にもぐって過ごすようです。
○8月〜翌年5月頃 幼虫はヒメタニシ、ヒメモノアラガイなどをエサにして育ちます。4回脱皮をして1.5aくらいの大きさに成長します。
ホタルの幼虫



☆ホタル観察のポイント
1 観察時期 7月中旬頃が一番多くみられます。
2 観察時間 午後8時頃〜9時頃です。
3 その他の条件 風がなく、蒸し暑い夜が最適です。

☆ヘイケホタルの生息できる環境
1 エサになるヒメタニシやヒメモノアラガイなどが豊富にいる水辺。
2 上陸して土繭を作れる畦など、柔らかい土のある斜面
3 卵を産むことのできる、水際の草などが茂った場所
4 ホタルは自分で光を出して結婚相手をさがします。そのため、水銀灯や車のヘッドライトなどの明かりが無い場所が好きです。
ホタルの幼虫をまく

 ホタルが見られなくなってきた原因の一つに、コンクリート護岸が考えられます。対策としては、池や沼の水際に土で小さな山などを作れたらホタルのふるさとができるかもしれませんね。
学芸課 加藤仁紀