25 興風会館


所在地 野田市
竣工年 S4
所有者 (財)興風会
設計者 大森茂
施工者 戸田組
構造 RC4
外壁 モルタル塗り
屋根形状・葺材 陸屋根,コンクリート
建築規模 526.8m2

約三百年余りにわたり野田における醤油の醸造に携わってきた茂木,高梨両家の一族が,キッコーマンのこれまでの発展は地域社会の援助によるものであり,会社はこれに報いなければならないとの主旨のもと,昭和3年に設立したのが興風会である。興風会の社会教化事業,社会奉仕活動の一環として,翌年興風会館が建設された。会館では講演会や講習会を始め,展覧会,映画会,相談会も開催され,まさに地域に密着した施設として親しまれてきた。竣工当時は,千葉県庁舎に次ぐ大建築であったと言われ,地域住民の誇りであったものと推察される。 

正面ファザードは厳格なルネッサンス的左右対称の構成であるが,住民に親しまれる施設に相応しく,威圧的なところは感じられない。玄関はゆったりとしたロマネスク風半円アーチで構成され,落ち着いた雰囲気を作り出している。目を上方に向けると,小振りな正方形や半円アーチの窓,さらに丸窓が設けられ,愛らしささえ感じられる。中央部がやや全面に張り出し,塔屋となっているが,そこでは段状のモチーフが繰り返され,強い印象を与えている。その形態は奥に行くほど低くなる側面の構成にも影響を与えているようである。

内部は数度の改修を受け,部屋の変更も多少あるが,当初の形態は比較良くとどめている。注目されるのは670席を有する大講堂の空間であろう。2階席が張り出した巨大な吹き抜けの空間は,内部にも持ち込まれた段状モチーフによるプロセニアムアーチや,曲面をなす天井によって,一体感のあるものになっている。更に,バルコニー席の壁に付けられたレリーフが華やかさを加えている。その他にも階段の手摺のうねるような形態や,暖炉のデザイン,アールデコ風の照明器具等,見るべきところのたいへん多い建築である。[江口]

正面

2階ロビー
客席

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