企 画 展
平成9年1月11日から2月23日まで開催されました。
城絵図の世界〜
城絵図は、城郭の配置や城下町の様子などを知る上で貴重な資料です。関宿城の城絵図は江戸幕府の命令や兵学の講義資料にするためなどの目的で数多く製作されました。これらの絵図はそれぞれ表情を変えながら、当時の関宿城の様子を私たちに語りかけてくれます。
ところで城絵図は何のために製作されたのでしょうか。
古来より城郭は戦略防衛拠点であり、その配置や構造は最高機密に属するものでした。このため城絵図の製作及びその管理には最大限の注意を払ったはずです。にもかかわらず関宿城1つとっても数多くの城絵図が存在するのは何を意味するのでしょうか。
城絵図を製作する目的の第1は城郭の設計です。このため郭や濠、土塁の配置を描いた図面が作られ、「縄張図(なわばりず)」と呼ばれました。
その第2は江戸幕府がその統制力を高めるためでした。17世紀半ばに諸国の大名に提出させた「正保城絵図」には城郭の構造や地形、城下町の構成や地勢が詳細に描かれています。なお、これを基にして製作されたと考えられる城絵図がいくつかあります。
その第3は、城の修理を幕府に願い出るためです。武家諸法度に「諸国居城雖為修補、必可言上」とあり、この規定に基づいて修理許可を得るために修理箇所を示した城絵図を製作しました。
その第4は軍学修養に供するためです。18世紀後半に編集された「主図合結記(しゅずごうけつき)」は、軍学者山県大弐(やまがただいに)が諸国の縄張図を収集したものですが、その後もこれら縄張図の写しが大名・旗本家に大量に流布したようです。
以上、城絵図の製作目的をおおまかに分類しましたが、実際には来歴不明のため、製作目的が明らかにならない城絵図が多いです。
主図合結記のうち下総国関宿
(当館) |
縄張図の形態をとるもので、主郭が土塁と濠・沼で区割りされています。主郭の本丸、二の丸、三の丸の配置が示されています。
主図合結記は江戸中期の尊王論者山県大弐(1725〜67)が兵学講義の資料として諸国の城郭縄張図を収集したものですが、後にその写しが大名・旗本家など不特定多数に流布したといわれます。
山県大弐は明和事件に連座し、明和4年(1767)藤井右門らとともに幕府により処刑されました。 |

主図合結記のうち下総国世喜宿
(当館) |
諸国城郭絵図のうち下総国世喜宿城絵図
(正保城絵図:内閣文庫) |
正保元年(1644)、江戸幕府が諸藩に各地の城郭と城下町一体の地図の製作を命じた、いわゆる「正保城絵図」の1つです。幕府が全国規模で城絵図を徴した目的は、軍用施設としての城郭内外の機密を完全に把握することによって、諸藩に対する幕府の統制力を強化することにありました。したがって「正保城絵図」は当時の城郭の姿を定格に伝えていると考えられます。
絵図の北西隅に「牧野佐渡守」と記載されていることから、関宿藩8代藩主牧野親成の在任中である正保4年(1647)から明暦元年(1655)の間に製作されたものと思われます。
なお、「正保城絵図」は国の重要文化財に指定されています。 |

下総国世喜宿城絵図
(内閣文庫) |
諸国当城之図下総国関宿
(広島市立中央図書館) |
広島藩主浅野家に伝えられたもので、「浅野文庫」として保管されています。藩主の軍学研修の用に供すべく製作されたといわれます。
利根川を背にして本丸、二の丸、三の丸、発端曲輪、天神曲輪が描かれています。また、城下の寺院は朱が施されています。 |

諸国当城之図
(広島市立中央図書館) |
関宿城の城絵図一覧
分類:A・・・縄張図に属する城絵図
B・・・「正保城絵図」の系譜に属する絵図
C・・・城下町をも含め広い範囲を描いた城絵図
法量:縦×横(ミリメートル)
名 称 |
法 量 |
分類 |
製 作 年 |
所 蔵 先 |
主図合結記のうち下総国関宿 |
267×490 |
A |
江戸中期以降 |
当館 |
東海道諸城図関宿城 |
290×400 |
A |
宝暦2年(1752) |
岡山大学附属図書館 |
下総関宿城図 |
300×430 |
A |
不詳 |
当館 |
城写図のうち総州関宿 |
278×400 |
A |
江戸後半 |
当館 |
下総国関宿城縄張図 |
245×355 |
A |
江戸中期以降 |
当館 |
関宿之城図 |
325×440 |
A |
不詳 |
国立公文書館内閣文庫 |
下総国関宿ノ図 |
380×540 |
A |
不詳 |
國學院大学図書館 |
諸国城郭絵図のうち下総国世喜宿城絵図 |
3,150×2,160 |
B |
正保4年(1647)〜明暦元年(1655) |
国立公文書館内閣文庫 |
下総関宿城 |
770×830 |
B |
不詳 |
国立国会図書館 |
関宿城図 |
785×820 |
B |
不詳 |
岡山大学附属図書館 |
下総関宿城図 |
775×740 |
B |
不詳 |
静嘉堂文庫 |
下総国関宿城本丸絵図 |
890×990 |
B |
弘化4年(1847) |
東北大学附属図書館 |
世喜宿城之図 |
685×595 |
B |
安永3年(1774)以降 |
関宿町教育委員会 |
総州関宿城図 |
745×875 |
C |
安永3年(1774)以降 |
国立国会図書館 |
諸国当城之図下総国関宿 |
402×277 |
C |
安永3年(1774)〜寛政11年(1799) |
広島市立中央図書館 |
下総国関宿城絵図 |
370×645 |
C |
慶応2年(1866) |
金竜院 |
関宿城下の図 |
500×375 |
C |
明治初期 |
個人 |
展示協力者
(敬称略)
国立国会図書館 国立公文書館内閣文庫 東京国立博物館 東北大学附属図書館 岡山大学附属図書館 広島市立中央図書館 関宿町教育委員会 國學院大学図書館 静嘉堂文庫 金竜院 昌福寺
忍田光 金子勝一 諏訪寿美子 林保 村松恒男 簗田寿昭 渡辺包夫
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