2020/06/18(木)
ツチアケビ
清澄山系にて。昨年に引き続きツチアケビの花を発見した(写真1)。昨年の開花確認は7月3日だったので、今年は早い。この株には3本の花茎が出ており、大きいものは高さ60センチ以上。かなり立派な株だ。

- 写真1
昨年の日記でも紹介したとおり、ツチアケビは自力で光合成をせず、キノコに寄生して生きる「菌従属栄養植物(きんじゅうぞくえいようしょくぶつ)」だ。その寄生相手がナラタケというキノコである。ナラタケは枯れ木を分解する。おそらく、写真2の右端に横たわった倒木にナラタケが侵入し、そこから地中に伸びたナラタケの菌糸束(きんしそく)にツチアケビが寄生しているのだろう。

- 写真2
ツチアケビは変わった植物だが、これでもランの一種である。それは花のつくりを見ればわかる(写真3)。花は3枚の花弁と3枚のがく片からなり、花弁のうち1枚は黄色くて複雑な形をしており、これを「唇弁(しんべん)」と呼ぶ。

- 写真3
花を上から見るとフリルのついた唇弁の形がよくわかる(写真4)。唇弁の上に白く伸びている棒状のものは「蕊柱(ずいちゅう)」といい、雄しべと雌しべが合体したもの。

- 写真4
蕊柱の先端には花粉が団子状に固まったものがついており、これを「花粉塊(かふんかい)」という。唇弁に惹かれて花を訪れた昆虫の身体に花粉塊がくっつき、他の花に運ばれて受粉する。

- 写真5
- ツチアケビ Cyrtosia septentrionalis(ラン科)
- ナラタケ Armillaria mellea(キシメジ科)
(尾崎煙雄)